奇人天才シリーズその5.5:檜垣万里子さん

Bones, Genius, Mac & iPhone — yam @ July 21, 2010 5:39 pm

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分解大好き万里子さんは慶應義塾大学脇田研究室の出身で、学生のときに Ephyra 製作チームのリーダーでした。その頃からすっかりメカの好きな学生になり、人数の少ない9月卒ながらSFCを首席で卒業して、私の元に来てもう三年になります。

「骨」展ではアシスタントディレクターを務め、私と一緒に洗濯機の骨を探して工場を隅々まで歩きましたし、椅子も携帯電話もPCMレコーダーも分解しました。クロノグラフの百以上ある微小部品をひとつ一つアクリルの板の上に並べたのも彼女でした。

MacBook Airの分解でも、彼女に指揮を取ってもらいました。元に戻すことができたら万里子さんのものにしても良いという約束で始めて、元に戻したときには4時間が経っていましたが、今でも元気に動いているようです。

先日、iPhone 4の実物を初めて見たときの第一声は、「このネジに合う工具はなかなか手に入らないんですよ」。もう十分、奇人の仲間入りでしょう。天才ぶりはまだ見せてくれてはいないのですが、天然ではあります。

いまさらながらiPhone 3Gのボディの秘密に気がつきました」という記事も彼女が自分の3Gを分解したことがきっかけでした。ひとつ一つ部品を楽しそうに見せてくれる彼女の報告を聞いているうちに、ボディの不思議なツールマークに気がついたのです。

この記事は大変大きな反響をいただき、桁違いのアクセスがあり、コメント欄でも議論白熱です。今のところ、おおざっぱに言うと、「普通はやらないことだが、こう考えると筋が通る」という私の主張に対して「アップルの意図はともかく、常識ではこう見るべき」という反論が技術屋さんから寄せられているという構図です。

今のところ「常識」の範囲内に、アップルが何故そんなことをしたのかを明確に説明できるストーリーは見当たらないと感じています。私は、一見非常識に見えても、筋が通っていると感じた考え方をいつも採用してきました。わくわくするブレークスルーはそこにしかないからです。

問題のツールマークをさらに拡大した写真をアップしておきます。なにが正しいかはアップルのみぞ知るですが、この議論自体を大いに楽しみたいと思います。自分で確認しましたっていう、第2、第3の万里子さんの意見が聞きたいですね。

ちなみに、30日にアップルストアでトークショーをやります。場所が場所ですが、このネタを扱う予定はありませんので、よろしくです。

いまさらながらiPhone 3Gのボディの秘密に気がつきました

Bones, Mac & iPhone — yam @ July 19, 2010 1:56 am

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分解大好きお姉さんの万里子さんが、不要になったiPhone 3Gを分解しました。その結果、今更ではありますが、ひとつ発見がありましたので報告します。

上の写真は、3Gのプラスチックボディの内側です。よく見ると通常のプラスチック部品ではあまり見られないツールマーク(縞模様のような溝)が見られます。この溝は、ボディの内側をNC加工(コンピュータコントロールのドリルによる切削)した痕跡です。

ユニボディと言われるMacBook ProやAirは、アルミニウムの固まりから削って内面を作るので、ボディの内側全体がNC加工のツールマークに覆われています。これはiPADも同じです。しかし、プラスチックの部品の場合は、型に始めからかなり複雑な形状を作り込むことができるので、後から加工することは通常行われません。

にもかかわらず3Gのボディの内側は、全体の5分の一ぐらいの面積がツールマークで覆われていました。明らかに、一度、型を使って成形してから、その後にNCマシンにセットして、ドリルで内面の一部を削り込んでいるのです。

何故こんな二度手間をするのか。

答えは、デザインにあります。iPhone 3Gの背面はご存じのようになめらかな曲面で覆われています。多くのデザイナーはその曲面の精度に驚嘆しました。プラスチックは冷えて固まるときにゆがみやすく(専門用語でヒケと言います)、なかなかこうはいかないものだからです。ゆがみを少なくする最も確実な方法は、プラスチックを厚く作る事です。例えばマイティマウスにはとても分厚い樹脂が使われています。しかし携帯電話の場合はそうはいきません。薄さ、軽さは最優先事項ですから。

もうお分かりでしょう。アップルは、iPhone 3Gの見事につるんとした背面を作るために、まずはボディを分厚く成形しました。それから、薄くする必要があるところだけをドリルで削って薄くしました。電子機器メーカーの常識では、コスト的にあり得ないような手間をかけることによって、極薄のしかし完璧な曲面のボディシェルを実現していたのです。

美しい形を実現することへのアップルの執念に、いまさらながら脱帽。

本当に胸がつぶれる話

Bones, Daily Science, Sketches — yam @ July 2, 2010 1:30 am

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「肋骨のはたらきは?」と聞かれると、多くの人は「内蔵を守る」と答えるでしょう。しかし、そうすると大切な臓器の大半が、やわらかいおなかにあるのも不思議です。もちろん心臓を保護する役割も果たしているのですが、実はもっと重要な機能があります。それは呼吸です。

肋骨は後方で背骨につながり、前方では胸骨につながっており、全体としては前後2本の縦棒の入った提灯のような構造になっています。左上の図は人の胸郭の簡単なモデルです。連なるリングが肋骨、右側の長い縦棒が背骨、左の短い棒が胸骨。内部に風船のような「肺」をおいてみました。

一見がっちりした構造に見えますが、実はそれぞれリングと前後の縦棒は、一種の関節になっていて、角度を変えられるように、つながっています。

ここで胸骨にあたる短い棒を下に動かしてみましょう。すると連なったリングは一斉に左下がりに傾きます(左下図)。その結果、胸骨は背骨に近付いて風船をつぶします。ずらりと並んだ柱が一斉に倒れて、建物が一方向に倒壊するのと同じですね。胸骨を上に引っ張ってリングを引き起こすと、最初の状態に戻って肺が空気を吸い込みます。

実際にはこの動きは小さなものなので、胸がつぶれるように見えることはありませんが、仰向けになったまま、大きく息を吸い込むと胸が、あごの方に向かって移動しながら、せり上がってくるのを確認することができます。一見頑丈な建築物のように見える肋骨は、呼吸のたびに倒れたり起き上がったりを繰り返しているのです。人の体って不思議ですね。

少し構造は違いますが、最近テレビにも登場するようになった土佐さんのWahha Go Goも、ふいごの肺を持っています。それがせり上がって空気を吸い込むのは、なかなか見事なアナロジーです。

脳内テープレコーダー

Bones — yam @ June 27, 2010 4:16 pm

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小学校の低学年の頃の私は、困った生徒でした。小学校2、3年の私の通知表を見て、「学習態度の欄って、こんなにぼろくそに書かれることもあるんだ。先生に嫌われたんだねー。」と妻があきれるほど。

私は、授業中に空想の世界に入ってしまう子供でした。鉛筆や消しゴムを空飛ぶ乗り物に見立てて、レースをしたり戦争ごっこをしたり。さすがに声は出さないのですが、夢中になって、筆箱や鉛筆を落とすことも少なくありません。先生としては当然、不意打ちの質問で注意を授業に引き戻そうとしてくれます。「聞いてませんでした、ごめんなさい」となるはずだったのですが、私の場合は少し違っていました。

自分でもどういうしくみかわからないのですが、先生の声が過去数秒分(ときには数十秒分)頭の中に録音されていて、音楽のように鮮明に再生されます。それをしばらく聞いて、ようやく先生が何を話していたか、何を質問されたかを理解します。聞いてない風に見えた私が、質問されてから数秒間考え込んだかと思うと、おもむろに返事をしはじめるので先生も驚いたでしょう。これが繰り返されるので、先生もかなり手を焼いたらしく、何度か両親が呼び出されて一緒に怒られてました。山田先生、本当に申し訳ない。

どうやら自分の頭の中には、聞こえてくる音声を、意味がわからないままの状態で一時的に保管する場所があるようです。歳をとって少し精度は悪くなりましたが、作業中に話しかけられたり、人と議論をしていて新しいアイデアを思いつくと、たちまちこの状態に入ってしまいます。

ため込んだ声を聞き直す間、私は外部に対して無反応になり、じっと相手を見つめていたりします。家族は慣れっこなので、「また時計マークが出てる」とかいいながら待ってくれますが、学生には結構怖がられたりもします。聖徳太子のようにいっぺんにできれば良いのですが、ひとつ一つしか処理できないので、どうか温かい目で見守ってやってください。

情報技術的に言うと、概念操作領域が忙しいときに、前のプロセスの終了まで生データを一時保管しておくバッファ、でしょうか。処理中に入力が無視されないのは便利ですが、応答遅延があるのが難。

同じような脳内処理をしているという人にはまだ会ったことがないのですが、どこかにいらっしますでしょうか。

(写真は「骨」展に出品されたPCMレコーダー。撮影:吉村昌也)

筋肉バネ

Bones, Daily Science — yam @ June 11, 2010 4:01 pm

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義足に関わるようになって、人の体のメカニズムにとても興味を持つようになりました。にわか仕込みのスポーツ・バイオニクスの話題から。

スポーツの世界では「体をバネのように」とか「膝のバネをきかせて」というような表現を良く聞きます。かつては単に比喩的な表現だと思われてきたのですが、近年、筋肉が本当にバネとして働いていることが明らかになってきました。

人が普通に立ったりしゃがんだりするとき、腿やふくらはぎの筋肉は、引っ張りながら縮む動作と、弛緩して伸びる動作を繰り返します。こうした運動では、筋肉は、建設機械の油圧シリンダーなどと同じように力を出す装置として働いています。しかし、ぴょんぴょん跳ねている時のふくらはぎの筋肉は、少し違うようです。

一般的に、しゃがんだ状態からジャンプするよりも、一度軽くジャンプして踏み込んでから地面を蹴った方が高く飛べる事は、誰もが経験するでしょう。いわゆる反動を付けるというやつです。この時、「ふくらはぎ+アキレス腱」全体は、自ら伸びようとするのではなく、着地の衝撃で引き延ばされてポテンシャル・エネルギーを溜め込み、直後にそれを解放して次のジャンプに移行するそうです。このメカニズムはほとんどコイルスプリングと同じ。

こういう使われ方をするときの筋肉は、とても短い時間で、伸張から収縮に転じることができ、スピーディな動きを可能にします。最近ではバスケットなどのスポーツにおいても、できる限り短い踏切時間で高く飛ぶための、バネ強化トレーニングが研究されているようです。

やっぱりスポーツって、体のバネ命。桜木花道が、試合中に「あっという間に誰よりも高く飛ぶ」のは、どうやら、常人じゃないバネ特性の筋肉の持ち主だということですね。

ワニトンマに告ぐ

Bones — yam @ April 17, 2010 10:38 am

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ワニトンマさん

東京にお住まいでしたら、是非今日の夕方、東京丸ビル
7階ホールの竹尾ペーパーショウに来て下さい。お会いしたいです。

山中俊治より

上の絵は、私が小学校低学年の頃に作ってしょっちゅう描いていた、「ワニトンマ」というキャラクターです。もう記憶が定かではありませんが、こんな感じだったと思います。昨日のエントリーにこんなコメントがつきました。

私も子供のころその海で泳いだ記憶があります。
ビーチボールが流されて泳いでも追いつけず困っていたところ
地元の子が颯爽と泳いで、取ってきてくれたことを思い出しました。
ちなみに私のおばあちゃんは像のような人でした。

Comment by ワニトンマ — April 16, 2010 @ 10:05 pm

私の祖母はゆったりとした物腰で優しく、本当に象さんのような人でした(お顔もそんな感じ)。小学生の頃、祖母の家の近くの海にいとこ達と海水浴に行きました。流されたビーチボールの記憶もあります。その上、HNがワニトンマですから、私の子供の頃をよく知っている人の書き込みである事は間違いありません。

でも父の兄弟は多く、「象さん」を祖母に持ついとこは山ほどいて、いまいち誰なのか特定できないでいます。連絡先わからない人もたくさんいるし。なので、ワニトンマさんに私信でした。ごめんなさい。

間に合うのか

Bones — yam @ April 14, 2010 3:52 am

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やっと帰って来ました。設営がこんなにぎりぎりピンチなのは初めてかも。明日は9時から設営で12時には社内向け内覧会。3時間しかない。長文を書く暇がなくて、ついっと気分なう。

膝詰め談義

Bones, SFC — yam @ March 6, 2010 12:13 pm

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最近どうも、医学生物学系の人と話すのが楽しくて仕方がない。それに目覚めさせてくれたのは養老先生でしたが、先日の倉谷さんとのセミナーも本当に刺激的な体験でした。

今度は、医学博士の大谷俊郎先生とトークショーを行います。大谷先生の専門は整形外科。慶應病院のスポーツクリニック担当でもある大谷先生は、特に関節の権威で、皆さんも良くご存じの有名プロスポーツ選手の膝を、幾例も手術で回復させた、知る人ぞ知る名医です。

写真は、美術品のように美しいと大谷先生が紹介してくれた最新の人工膝関節です。酸化ジルコニウムという耐摩耗性に優れた特殊合金製の深いグレーが何とも気品があります。すばらしい光沢ですが、これは通常の工業製品の鏡面仕上げとはレベルの違う高精度研磨がかけられているからです。わずかな凹凸でも長年使っているうちに不具合に成長するので徹底して平滑にしてある。まさに機能美ですね。医療用品は基本的に「展示」を行わないのですが、骨展では、大谷先生の力添えで展示することができました(これも)。

今回は、SFCのエクスデザイン展覧会の会場イベントであるトークセッションのお相手として、指名させていただきました。当日の話題については、出たとこ勝負なのですが、先日打ち合わせをしたときに、会場で詳しく聞いてみようと思った話題をいくつかばらしますと、こんな感じ。

「膝関節は、少し隙間があった方が良く回る」「人の体に埋め込むものは、品質管理上、梱包も普通じゃない」「膝の専門家は、軸受けのエンジニアと話が合う」「生物学的製剤」「人工膝関節でスポーツは可能か」「外角低めをホームランする膝の使い方」などなど。

ヒンジや軸受けなどの回転ジョイントは、プロダクトのデザインにおいても、キーポイントのひとつ。今からわくわくします。

トークショーの日時は3月14日(日)16:00〜17:30、場所は六本木アクシスギャラリー。無料ですが、席の事前申し込みが必要です(定員50名)。詳しくはこちら

(写真撮影:吉村昌也)

アクシス・ギャラリーにFlagella登場

Bones, SFC — yam @ March 5, 2010 9:10 am

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私の研究室がある慶應義塾大学SFCエクス・デザインの、展覧会のお知らせです。骨のあるようなないようなロボット Flagellaにもう一度会いたい人、まだ見てない人は是非どうぞ。

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慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 エクス・デザイン展 2010
展示会期:2010年3月14日(日)〜16日(火)
時間:2010年3月14日(日)13:00〜19:00 / 3月15日(月) 16日(火) 11:00〜 19:00
場所:AXIS ギャラリー (東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 4F)
主催:慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 エクスデザインプログラム
参加費:無料
HP:http://xd.sfc.keio.ac.jp

【展示概要】
慶應義塾大学エクス・デザイン(XD)の第2回展示会のご案内をお送りいたします。
今回はインターフェイス、ロボット、音楽、映像、プロダクト、メディアアートなど
多様な分野にわたる十数点の作品展示と技術デモを行います。
会期中、山中俊治、坂井直樹、岩竹徹らをはじめ本プログラムに関わる教員によるセッションも予定しています。
是非この機会にお気軽にご来場を賜りますようご案内申し上げます。

【参加者】
岩竹 徹(コンピュータミュージック)
筧 康明(インタラクティブメディア)
加藤 文俊(コミュニケーション論)
坂井 直樹(プロダクトデザイン)
田中 浩也(メディアインスタレーション)
中西 泰人(ヒューマンインターフェイス)
藤田 修平(映像製作)
山中 俊治(インダストリアルデザイン)
脇田 玲(情報デザイン)
及び各研究室の院生/学部生

【ゲストスピーカーセッション】
■ 3月14日(日)
・14:00〜15:30 岩竹 徹(本プログラム教員)
ゲスト:伊東 乾(作曲家・指揮者)
湯浅 譲二(作曲家・カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授)

・16:00〜17:30 山中 俊治(本プログラム教員)
ゲスト:大谷 俊郎(慶應義塾大学教授、看護医療学部、医学部整形外科、スポーツクリニック(兼担))

■ 3月15日(月)14:00〜15:30 坂井 直樹(本プログラム教員)
ゲスト:しりあがり寿(漫画家)

■ 3月16日(火)14:00〜15:30 脇田 玲(本プログラム教員)
ゲスト:小林 茂(IAMAS)

定員:50名(各回) 事前申し込み
お名前、所属、連絡先、希望日程を明記いただき、下記アドレスまでお送りください。

お問い合わせ先:TAIRA MASAKO PRESS OFFICE 担当 平昌子
masako@tmpress.jp

らせんとふし

Bones, Daily Science, Works — yam @ February 14, 2010 12:44 pm

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生物らしい形の典型は、螺旋と節(ふし)。先日の対談での倉谷さんの言葉です。このふたつは、いずれも生物の発生成長の過程で生まれる形です。

つるや巻貝ばかりでなく、植物の実や葉のかたちや骨のカーブなどにも螺旋曲線が現れる事はよく知られています。生物の細胞は、大きくなるほどたくさんの細胞を生み出すことができるという、一種の複利計算で増えていきます。ある一点を起点に雪だるま式にふくれあがった形が対数螺旋と言われるもので、これが多くの生物の形の基調になっているようです。

一方、節は、発生過程を見ると古い細胞を一定間隔で刻むように新しい細胞が現れる事で生まれるそうです。生物はある程度成長すると自らの体を刻んで、複雑な構造を獲得します。私たちの背骨は最もわかりやすい例ですが、例えば手も、骨が先に行くほど小さくなって、枝分かれして、ものをつかんだり、握ったりできる繊細な構造を形成しています。単調な繰り返しではなく、先に行くほど繊細になるというのも、生物の節の特徴ですね。

螺旋が単調な成長の典型であるのに対し、節は複雑化の典型です。倉谷さんが生き物とそうでないものを見分ける鍵として提示しているのは、生命の製造プロセスの痕跡なのです。

工業製品のボディは、一般的には最終的な形で製造され、それ以降は成長しないものなので、そこには螺旋や節が生まれる必然性はありません。デザイナーが形だけを螺旋にすることはもちろんできますが、研究者の目で見れば構造がそうなっていないのは明らかです。チェーンなどは、同じものがたくさんつながっていて一見、節があるように見えますが、複雑化をともなうものではないので、これもちょっとちがう。

もっとも、近頃はプロダクトも少しは成長するようになりました。ソフトウェアの世界では、リリースされた後の増殖やカスタマイズは当たり前になっています。いずれプロダクトも「成長と複雑化」を獲得して、倉谷さんにも見分けのつかない形になっていくのかもしれませんね。

写真は2005年に開催した展覧会「MOVE」の一風景です。槇文彦さん設計の青山スパイラルビル、あの場所に立つCyclopsが見たいというイメージが先にあって企画した展覧会でした。ビルの名を象徴する「螺旋」階段の中央に「節」を持つロボットが立っています。この光景を思い出して、倉谷さんの話との符合にうれしくなりました。

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