脳内テープレコーダー

Bones — yam @ June 27, 2010 4:16 pm

pcm_recorder

小学校の低学年の頃の私は、困った生徒でした。小学校2、3年の私の通知表を見て、「学習態度の欄って、こんなにぼろくそに書かれることもあるんだ。先生に嫌われたんだねー。」と妻があきれるほど。

私は、授業中に空想の世界に入ってしまう子供でした。鉛筆や消しゴムを空飛ぶ乗り物に見立てて、レースをしたり戦争ごっこをしたり。さすがに声は出さないのですが、夢中になって、筆箱や鉛筆を落とすことも少なくありません。先生としては当然、不意打ちの質問で注意を授業に引き戻そうとしてくれます。「聞いてませんでした、ごめんなさい」となるはずだったのですが、私の場合は少し違っていました。

自分でもどういうしくみかわからないのですが、先生の声が過去数秒分(ときには数十秒分)頭の中に録音されていて、音楽のように鮮明に再生されます。それをしばらく聞いて、ようやく先生が何を話していたか、何を質問されたかを理解します。聞いてない風に見えた私が、質問されてから数秒間考え込んだかと思うと、おもむろに返事をしはじめるので先生も驚いたでしょう。これが繰り返されるので、先生もかなり手を焼いたらしく、何度か両親が呼び出されて一緒に怒られてました。山田先生、本当に申し訳ない。

どうやら自分の頭の中には、聞こえてくる音声を、意味がわからないままの状態で一時的に保管する場所があるようです。歳をとって少し精度は悪くなりましたが、作業中に話しかけられたり、人と議論をしていて新しいアイデアを思いつくと、たちまちこの状態に入ってしまいます。

ため込んだ声を聞き直す間、私は外部に対して無反応になり、じっと相手を見つめていたりします。家族は慣れっこなので、「また時計マークが出てる」とかいいながら待ってくれますが、学生には結構怖がられたりもします。聖徳太子のようにいっぺんにできれば良いのですが、ひとつ一つしか処理できないので、どうか温かい目で見守ってやってください。

情報技術的に言うと、概念操作領域が忙しいときに、前のプロセスの終了まで生データを一時保管しておくバッファ、でしょうか。処理中に入力が無視されないのは便利ですが、応答遅延があるのが難。

同じような脳内処理をしているという人にはまだ会ったことがないのですが、どこかにいらっしますでしょうか。

(写真は「骨」展に出品されたPCMレコーダー。撮影:吉村昌也)

11 Comments »

  1. [...] This post was mentioned on Twitter by Shunji_Yamanaka 山中俊治, Shunji_Yamanaka 山中俊治. Shunji_Yamanaka 山中俊治 said: ブログアップです。「脳内テープレコーダー」。先生に嫌われたんだねーと妻があきれる私の通知表。 http://ow.ly/23L3K [...]

  2. 私は街を歩いていると、ふと何か気になり頭の中で歩いてきた映像を巻き戻して確認したりすることが結構あります。
    「あれ? 鍵をどこに置いたっけ」という忘れ物の場合にも自分の行動を映像で巻き戻し再生して「あぁ、戻ってすぐ手を洗ったからシンクの横に置いたんだ」と思い出します。
    私は記憶のインデックスが映像になって居るのだと思います。

    文中で書かれている音を記憶する人にはあったことが無いですが、今までの私的観測によると私のような映像系の人は結構いると推測してます。

    Comment by deltam — June 28, 2010 @ 5:17 pm
  3. 初めまして、コメントさせて頂きます。
    私、少しだけですが似ています。

    授業で、いつも左手の上に頭を置いて寝っ転がりながらイタズラ描きしていましたが、質問には普通に答えられました。先生は驚いていましたが、私には結構当たり前だったので、逆になるほどと思いました。

    それと知能テストで何回(何拍?)音が出たかと言うのがありますが、数えて無くても頭の中でリプレイして、その数を数えて答えられます。

    短期記憶が優れているのとはまた違うと思います。
    自閉症の人がスクリーンショットの様に画像をそのまま覚えられるのと、かなり似ている気がします。それに時間軸が付いた様なイメージです。同じかどうか分かりませんが、面白いです。

    Comment by Masato Nasu — June 28, 2010 @ 8:36 pm
  4. deltamさん

    貴重な情報をありがとうございます。
    ビジュアルレコーダーはあまり使った事ありませんが、直前の行動を思い出してみると確かに結構残ってますね。でも今朝の行動となると、もうかなり断片化してしまっています。

    Comment by yam — June 29, 2010 @ 3:24 pm
  5. Masato Nasuさん

    初めまして。山中です。情報をありがとうございます。
    ようやく同胞に出会えたようで、うれしいです。
    数えてなくてもリプレイして数えられるのは全く同じです。
    長い番号なども一度読み上げるとかなり精度よく憶えられますよね。
    私も妻に指摘されるまでは誰もがやっている事だと思っていました。

    Comment by yam — June 29, 2010 @ 3:29 pm
  6. 返信ありがとうございます。

    >長い番号なども一度読み上げるとかなり精度よく憶えられますよね。

    ええ!私はそれは出来ないです。

    それにしても人間の脳は本当に凄いですね。
    通常は自分たちの脳の凄さを全く認識できずに過ごす訳ですが、情報処理の速さ等、誰でも物凄いです。

    人間は皆凄いと言う事は、いつでも忘れないようにしたいと思います。

    Comment by Masato Nasu — June 29, 2010 @ 5:33 pm
  7. asteriskとinsettoを購入し続けている男です。
    上記の例に比べて、山中さんのに近い感じです。
    いまだに聞いていなくても耳が巻き戻しです。
    親がセンセイに呼び出されていました。
    そのあたりはおんなじです。
    僕も数字は無理です。
    完全に他のことを考えていて、「聞いてないでしょ!」と怒られてから巻き戻して、余計に顰蹙を買います。
    映像は、仕事が映像なのでスチルでは結構覚えられます。
    でも、時間がたつと反転しちゃったり、事柄が変形したりしますが。

    Comment by kojinoid — June 29, 2010 @ 6:47 pm
  8. “記憶は、取り出せないだけで生まれた時からの分が実は全て残っている可能性がある。(脳の中だけでは無い可能性もある。それこそ場所等にも残していたり。)”

    と言った事を友人で哲学やっている人が話していました。
    ベルクソンはデザイナーが読むと、体感的に既に理解している部分があるだろうと言ってました。

    異常な記憶力を発揮する人は、人より記憶力が優れていると言うよりは、通常では取り出せないその記憶を、取り出す術を持っている。

    何か凄いと思う能力を発揮する人は、人より優れた脳を持っていると言うよりは、バルブ(脳のリミッター)が緩んでいると言う風に、私は思っています。

    Comment by Masato Nasu — July 1, 2010 @ 6:15 am
  9. kojinoidさん

    初めまして。コメントありがとうございます。
    仲間ができてうれしいです。
    数字と言っても円周率何桁とかそんな話ではありませんよ。
    ソフトのシリアルNoとかを一度読み上げてから入力すると
    一気にできるという程度のことです。
    「聞いてないでしょ」+「聞いてんのかよ」はしょっちゅう言われますね。

    asteriskとinsettoはお役に立っていますでしょうか。

    Comment by yam — July 2, 2010 @ 12:09 pm
  10. 脳内テレコの話は面白かったです。ぼくも同じように、
    ちょっと油断していた状況で話しかけられた際には
    メロディ先行型で脳内再生をします。つまり、音程で
    会話のイントネーションを探っているっぽいです。

    また、そう言う話で言えばぼくは斜視なのですが、
    意識的に両眼の風景をあわせたり外したりできます。
    一度眼科医に行ってその話をしたときには驚かれましたが、
    たぶんそうした左右の連動のための筋肉は不随意筋として
    認識されているのかなと思いました。なかなか面白くて、
    左右では焦点のあわせやすさに遠近があったり、微妙に
    色温度も違ったりすると行った発見があるのですが、
    誰にも話す機会がなかったためここで書き込んでしまいました。
    すみません。

    Comment by kazwow — August 3, 2010 @ 12:17 am
  11. 身体論に関心があります。脳内の情報処理については、まことにおもしろいことが多くて、研究の深みにはまりそうです。(笑)残念ながら、私自身には、そういったはっきりした経験はないのですが、ここにコメントしていらっしゃる方たちと、もっといろいろお話してみたいです。なんとなく、分かるような気がします。。。

    Comment by tomotama — November 20, 2012 @ 1:09 am

RSS feed for comments on this post. TrackBack URI

Leave a comment

Copyright(c)2017 山中俊治の「デザインの骨格」 All rights reserved. Powered by WordPress with Barecity