楽器の中の部屋
楽器の演奏については全く不調法なのでハードルが高いのですが、デザイナーとして楽器の、特にアコースティックな楽器の構造が好きです。
先日、楽器の内部構造を建築写真のように撮影した一連の写真を知りました。Bjoern Ewersという写真家による、ベルリンフィル室内楽オーケストラのキャンペーンポスターらしいのですが、楽器の内部空間の魅力をこれまでにない方法で見せてくれる写真に、強い感銘を受けました。
生の音を奏でる楽器の多くは、共鳴のための空間を内部に持っています。弦やリードの振動によって生まれた音は、その空間の中を様々に伝わりながら、より力強く美しく醸成されて、音色となります。一連の写真は、その共鳴箱を建築のインテリアにみたてて、音の出入り口から差し込む光で撮影するというアイデアが秀逸。高解像度のファイバースコープで撮影したのでしょうか、見ていると美しい音が聞こえてきそうです。
バイオリンの独特のカーブを持った共鳴箱が、どのようにしてあの美しい音色を生み出すかについては、まだ十分には解明されていません。もしあれが単純に四角い箱だったら、向かい合う面の距離に合う長さの波が何度も往復して、特定の音ばかり強く出るようになってしまうでしょう。あの優雅で複雑な曲面が、様々な音域に柔軟に対応するために採用されていることは間違いないようです。
良く知られている事ですが、音階は、音の波長の不思議な調和でできています。1オクターブ上がるとちょうど波長が半分になり、その音を生み出す弦の長さも半分になる。つまり、音階に対応した長さの弦や管を並べると、1オクターブごとに半分、半分の半分、半分の半分の半分…と変化していく、きれいなカーブを描く列ができる事になります。これを数学的に言うと、等比級数と言ったり指数関数と言ったりするわけですが、それが人の耳にも心地よく聞こえるのです。
この音色と物理法則の美しい関係は、多くの物理学者や数学者を魅了してきましたが、当然の事ながら楽器のデザインの根源的な基調にもなっています。ギターのフレットのピッチが心地よいリズムを持っているのも、グランドピアノの上から見たかたちが美しいカーブを描いているのも、パイプオルガンの管が壮大なアーチを作るのも、みな同じ理由からなのです。
あー、アコースティックな楽器デザインしたい。
何かの建物と思ったら、
楽器の中なのですね.
楽器のデザインで言えば、
ストラディバリウスには謎が多いらしいですね.
蛇足です.
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数学も芸術。美しい。
tomotamaさん
コメントをありがとうございます。
最近、あまりかまっていなかったのですが、古いエントリーにもコメントいただきましたことうれしく思います。
楽器の中には住めませんが、部屋をスピーカーのホーン(の一部分)にしちゃったりする方はいらっしゃいますね
あと、押し入れをエンクロージャー(スピーカーの箱)にしちゃったりとか