このブログが書籍になりました

Works — yam @ 1月 31, 2011 1:12 am

このブログが書籍になりました。一部の本屋では先週末から平積みにされているそうですが、正式には昨日が発売日。

書籍の電子化が話題になっています。リーダーと呼ばれる文章を読むためのデバイスの選択肢も広がり、蔵書を自分で断裁、スキャンしてデータ化する「自炊」などという言葉も流行語になりました。もはやこの流れは止められないものと思います。

そういう時代にあって、ブログという電子データを書籍化する意味は何でしょう。世界中から閲覧できるテキストデータを、あえて紙という工業材料の上に印刷し、本という重さのある物体に変換する意味。この書籍化は私自身への問いかけでもあります。

実際に書籍になって手に取ってみると、意外な事にとてもうれしく思いました。その重さやインキの匂いが心地よく、ページを開くという儀式が楽しく、その中にある自分の文章がなんだか自分のものではないような印象を受けます。

それはデザインの力だと思いました。もちろん、このデザインには装丁のデザイナーや編集者の努力も含まれるのですが、ここで私の言うデザインは、本という物体の根源的な設計そのものです。ページという物に文字を並べてそれを片側で綴るという立体構造、あるべき紙の厚さや重さ、文字の大きさ。千年以上昔から技術と戦いながら少しずつ工夫を重ねられ、進化して来た形。そこには、まだまだ侮れない力があるように感じました。

もし書籍が内容だけで価値を持つなら、この商品は同等の物が,ネット上に無償で流通している不思議な商品ということになります。しかし実際に手に取っていただければ、おそらくは皆さんにも違う印象が伝わるのではないでしょうか。

書籍化するにあたっていくつかの工夫をしました。掲載記事を約半数にしぼり、テーマ別に並べ替えました。写真や図版は、半数以上が元の高精細データから起こしたカラー印刷になっているので、ブログよりも見やすいかもしれません。書籍タイトルもブログタイトルのまま「デザインの骨格」

<第1章>アップルのデザインを解剖する:MacBookAirの解剖 他
<第2章>デザインを科学する:旅客機の全長と便器のサイズ 他
<第3章>コンセプトを形にする:日産自動車を辞めた理由 他
<第4章>スケッチから始める:生き残れなかった斬新なアイディア 他
<第5章>モノ作りの現場から考える:深澤直人さんの台形 他
<第6章>人と出会う:チームラボの猪子寿之さん 他
<第7章>骨格を知る:人工物の骨 他
<第8章>人体の秘密を探る:「かたちだけの愛」を読む 他
<第9章>漫画を描く、漫画を読む:浦沢直樹さんの『PLUTO』 他

巻末には、2007年に雑誌アクシスに書き下ろしたマンガが、全ページ(といってもたったの6ページですが)掲載されています。

少しばかり、ブログの更新をお休みしていましたが、今日より週1、2回の更新を再会したいと思います。

15 Comments »

  1. […] This post was mentioned on Twitter by スィズィ, Yusuke Yamagami, キムチ, Shinya Narita, tsuno3 and others. tsuno3 said: RT @Yam_eye: 久々のブログ更新です。「このブログが書籍になりました」…世界中から閲覧できるテキストデータを、あえて紙という工業材料の上に印刷し、本という重さのある物体に変換する意味。 http://ow.ly/3MP2N […]

  2. 書籍化おめでとうございます.

    はじめまして、
    昨年から、貴サイトを訪問させていただきました.
    コメントを恐れ多くもさせていただきます.
    まさか、書籍化されるとは(;・∀・)

    これからもよろしくお願いします.
    あらためて、書籍化おめでとうございます.

    コメント by 喫茶店 — 1月 31, 2011 @ 7:30 am
  3. 喫茶店様

    ありがとうございます。
    これからもコメントをお願いします。

    コメント by yam — 2月 2, 2011 @ 12:33 am
  4. はじめまして。
    先日書籍を購入し、現在読み進めています。目から鱗がぽろぽろと落ちてくることばかり書いてあって、読んでいてとても楽しいです。電車の中で夢中になっていたら降りるの忘れてしまうほどでした。
    物理の先生に面と向かって「物理大嫌い」と言ってしまったことがあるほど物理嫌いな性格です。でもこの書籍を読んで物理って美しいんだとはじめて感じられました。これを機にもう一度一から学ぼうと思います。

    一冊の本としてまとめてくださったおかげで将来へのビジョンが明確になってきた気がします。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。
    ツイッターもこっそりとフォローさせて頂きます!

    コメント by Elephant_dan_dy — 2月 2, 2011 @ 9:37 pm
  5. Elephant_dan_dyさん

    コメントおよびtwitterフォローありがとうございます。
    物理学も数学も、何故それが面白いのか、必要なのか、そういう所にゆっくり気がついて行くような学び方ができると良いのですが、現実はなかなかそうは行かないようですね。
    私の本がきっかけになって、少しでも興味を持って頂けたことを、とてもうれしく思いました。

    コメント by yam — 2月 4, 2011 @ 3:53 pm
  6. はじめまして
    少し前にブログが見れなくなったときに、書籍化の話を知り
    少し淋しい気持ちで本をすぐに注文しました。

    いまやRSSリーダも様々にデザインされているので
    それで貴サイトを見れなくなってしまうのかと
    肩をおとしていたので、本記事はたいへん嬉しく、
    また自分が少し浅はかだと恥ずかしくなりました

    「あえて紙」という発想をもち「本」を知るというところに辿り着く。
    普段からこういうことができなければならないなと感じます

    紙とリーダを見比べるということもできることに今はわくわくしています
    書籍化おめでとうございます&ありがとうございます!

    コメント by umine — 2月 5, 2011 @ 9:10 pm
  7. umineさん

    コメントをありがとうございます。
    ブログが見れなくなったのは、実は単純なサーバートラブルでした。
    ご迷惑をおかけしましたが、サーバーを移転しましたので、今後は安定するかと思います。

    年末から書籍に掲載する記事を選ぶために読み直したり、写真を選定したりしていて、なかなか更新にまで手が回らずにおりました。
    コメントをいただいて更新を待っていただいていた事を知り、申し訳なく思うとともにとてもうれしく思いました。お詫びと御礼を申し上げます。

    これからもよろしくお願いいたします。

    コメント by yam — 2月 6, 2011 @ 2:16 am
  8. 店頭でみかけて迷わず買いました。
    insetto5本持ってる男です。
    いま、こんな仕事をしております。
    マンガが好きな山中さんに見ていただけるとうれしいです。

    2月19日(土)マンガみたいなミラクル映像博覧会
    “マンガみたいな”ことが現実に起こったら…!?
     単なる衝撃映像ではなく、マンガの世界のような、世界中のミラクルな瞬間を紹介する映像スペシャル第2弾。
     カメラが偶然捕らえてしまった「マンガみたいなミラクル映像」の数々を紹介する。
     面白映像はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ブラジル、ドイツなど、世界中から集結。
    「これがマンガみたいなミラクルな瞬間だ!」という映像を、マンガのみたいに集中線や擬音でショーアップ。
     実写とマンガが融合した超あたらしい映像!

    また、番組中のイラストを日本のギャグマンガ史に残る「マカロニほうれん荘」の鴨川つばめ氏が貴重な原画を提供しているのも見どころです!
    お見逃し無く!

    http://www.tv-asahi.co.jp/miracleeizou/

    コメント by Koji — 2月 12, 2011 @ 12:18 am
  9. はじめまして。
    twitter氏の推薦でたどりつきました。
    書籍化、おめでとうございます。
    ぜひ、「手にとって」、読んでみたいと思います。

    コメント by 7olll — 2月 18, 2011 @ 5:09 pm
  10. はじめまして。木全(キマタ)と申します。
    日経デザインの太田様から「デザインの骨格」を献本いただき、
    拙ブログに書評をアップさせていただきました。
    よろしければ、ご笑覧ください。
    「デザインの骨格」とても面白く読ませていただきました。
    ありがとうございました。

    コメント by 木全賢 — 2月 23, 2011 @ 6:56 pm
  11. 初めまして
    本屋でデザインの本を探している所に21_21 Design Sight の「骨」展を
    思い出して懐かしく思い、買いました。
    ブログが本になった事でデザインをリアルに感じられて読んでいて面白いです。
    「骨」展を見に行った時はデザインを工業的な面で捉えられて楽しかったです。
    これからブログを見させて頂きますのでよろしくお願いします!

    コメント by JL8WEZ — 2月 27, 2011 @ 2:36 am
  12. 木全さん

    ブログでの素敵な書評ありがとうございました。
    精進します。

    コメント by yam — 2月 27, 2011 @ 9:00 pm
  13. JL8WEZ さん

    コメントありがとうございます。
    骨展にもいらして頂いたのですね。
    ブログと書籍の違いは私自身面白いと感じています。
    これからも応援して下さい。

    コメント by yam — 2月 27, 2011 @ 9:04 pm
  14. 書籍、拝読させていただきました。拙ブログに、書評を掲載させていただきましたので、良かったらお目通しください。http://naichi.posterous.com/45326508

    コメント by naichi — 3月 9, 2011 @ 3:20 pm
  15. 今(2014年11月)、改めて、この本の表紙を見ると
    Apple Watch を連想させるものですね(勿論、この本の方が先ですが)。
    デザインというか見せ方も含めて。
    Apple パクった ?!(笑)

    コメント by ゆらぎ — 11月 17, 2014 @ 11:55 am

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