日の目を見なかったモデルを偲ぶ会 その2 妖怪の椅子
日の目を見なかったモデルを偲ぶ会、第二弾です。正確に言うと一度は日の目を見たのですが、製品化されなかったものです。
この椅子は1997年春にArflexの新しいショールームのためにデザインされました。プロジェクト全体は坂井直樹さんがプロデュースして、私の他に井植洋さんやグエナエル・ニコラさんも参加していました。
イメージは空中に浮かんだ一枚の布。薄く、軽い素材が空中で固まって、人の体を支えてくれる。最終的にはKite(カイト)という名前になりましたが、開発中のコードネームは「一反木綿(いったんもめん)」。
ゲゲゲの鬼太郎に出てくるあいつです。あれが椅子になってくれたら多分理想的だなって。実はヌリカベというソファとセットでした。友人の技術者には、子供の頃にロボットや怪獣が好きだった人がたくさんいますが、私は多分、妖怪派です。
さて、この妖怪たちが滑らかに動き回れるように取り付けた、一風変わったキャスター(中央の写真)は、昔のものの復刻です。戦後しばらく、工場内の運搬台車によく使われていたらしい。ステンレスのお皿のような車輪を斜めに使い、垂直の回転軸がジグザグに曲がってその中央に刺さっています。メーカーのカタログで見つけて問い合わせたら、既に生産中止だったので見よう見まねで作ってみました。ちょっと不思議な構造ですが、大きな回転キャスターとしてひらりひらりと動きます。
座面はFRPをコアに、2層のウレタンと綿の4層構造とになっており、固くてしっとり。表皮のファブリックは高名な家具職人の宮本茂紀さんが張ってくれました。
このプロトタイプは、3ヶ月間、オープンした東京ショールームの玄関を飾りました。残念ながら、斬新すぎたのか、コストのせいか、あるいは妖怪とArflexの組み合わせにそもそも無理があったのか、商品化には至りませんでした。売ってくれるところがあれば、もう一度作りたい椅子です。
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一反木綿だ!!キャスターの軸も一反木綿の手みたい!この椅子は起き上がっている面に向かってまたいで座るんですよね?(°∀°)