日の目を見なかったモデルを偲ぶ会 その1 バルナックライカへのオマージュ

Works — yam @ June 6, 2010 12:57 pm

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中村勇吾さんの「日の目を見なかったSWFたちを偲ぶ会」に影響されて、日の目を見なかったモデルを偲ぶ会でもやってみようと思います。不幸にして製品化されることなく、ただの彫刻に終わってしまったモデルたち。その中でも特に気に入っているのがこれです。

このデジタルカメラは、2000年に、計画されていたパナソニックとライカの提携を念頭に置いてデザインしたもので、初期のライカへのオマージュになっています。

1913年にオスカー・バルナックは、当時は映画用だった35mmフィルムをローラーで送って、コマ撮り撮影できる超小型のカメラを考案しました。それまでのスチルカメラは、一枚ずつフィルムを差し替えて撮影していたのですが、これにより連続的な撮影が可能になりました。

バルナック・ライカ、あるいはウル・ライカと呼ばれる彼の試作品は、レンズの左右にローラーを取り付けただけの極めてシンプルな本体に、ファインダーや測距計などを外付けするシステムカメラとして設計されました。「最小の核と拡張性」、その明快な設計思想ゆえに後の35mmフィルムカメラの原型となっていきます。

新しいデジタルカメラをデザインするにあたって、デジタルのもっともシンプルなユニット構成は何かを考えることから始めました。行き着いたのはレンズと撮像素子(+画像処理エンジンとメモリ)に液晶ファインダを付けただけのモジュール。このミニマルなユニットを核として、バッテリー内蔵のグリップや、ストロボ、液晶パネル、などを外付けにしたシステムカメラ、デジタルの時代の「最小の核と拡張性」の提案でした。

パナソニックが、ライカのレンズを使ったルミックスブランドを展開していったのは、私たちがこれを提案した翌年から。その最初のシリーズのアッパーミドルクラスとして計画さました。

モデルは株式会社日南によるアルミの削り出し。撮影してくれた清水行雄さんもとても楽しみにしてくれたのですが、残念ながら製品化には至りませんでした。パナソニックのデザインカンパニーの人たちもとても気に入ってくれて、このモデルは今でも大切に保管してくれているそうです。

リコーのGXRなどを見ると10年早かったのかも。合掌。

9 Comments »

  1. はじめまして。いつもブログとTwitterを拝見させていただいております。

    デジタルの時代の「最小の核と拡張性」。

    確かにデザインが時代や性能の先を行っていたのかもしれないですね。

    けれどもそこまで見通せる先見性、尊敬いたします。

    山中さんの艶めかしく美しいキカイのデザインが大好きで、

    学生時代、Webにあったこのカメラのスケッチを10回は模写させていただきました。

    あの絵にはプロダクトデザインのスケッチの見せ方が凝縮されてると感じておりました。

    そして私は、今年から私はプロダクトデザイナーになることができました。

    山中さんには本当に遠くから感謝しております。

    Comment by Tanouem — June 6, 2010 @ 2:05 pm
  2. [...] This post was mentioned on Twitter by samo1000 and Ryo.Yos, Shunji_Yamanaka 山中俊治. Shunji_Yamanaka 山中俊治 said: ブログアップです。 @yugop さんの「日の目を見なかったSWFたちを偲ぶ会」に影響されて、日の目を見なかったモデルを偲ぶ会 その1 http://bit.ly/9QORO6 #shinobu [...]

  3. 初めまして。いつもブログの更新を楽しみにしています。
    新たなことに気付かせてもらえるこのブログが好きです。
    今回挙げられたカメラは、山中さんも気に入っていて、清水さんも気に入っていて、
    パナソニックの方々も気に入っていて、それなのにどうして製品化に至らなかったのですか?
    ちなみに僕も気に入りました。

    Comment by kosuke — June 6, 2010 @ 3:16 pm
  4. こんばんは。骨展以来、ずっとBlog(と最近はTwitter)を興味深く拝見しています。

    バルナックライカを受け継いだ、大きなRの長円型のボディがカッコいい&グリップしやすそうで素敵ですね。鏡筒が堂々と真ん中にあるのも、カメラらしくて僕は大好きです。

    背面に横並びになったボタンや上面の情報LCDを見ると、まだフィルムカメラがお店に普通に並んでいた2000年という時代を感じます。当時は主要デバイスの陳腐化が今よりもさらに激しく、システム商品は作りづらかったんでしょうか。。

    最後に・・・弊社製品を紹介頂きましてありがとうございます。:-)

    Comment by E-zuka — June 11, 2010 @ 1:03 am
  5. Tanouemさん

    初めまして。
    プロダクトデザインの世界へようこそ。
    そろそろ5月病でしょうか。笑。
    少しづつ未公開のスケッチもアップしていきますので楽しみにしてください。

    Comment by yam — June 12, 2010 @ 1:09 am
  6. kosukeさん

    初めまして。
    ホント不思議ですよね、企業内の意志決定は。
    いまだに私にとっても魔境です。笑。

    Comment by yam — June 12, 2010 @ 1:11 am
  7. E-zukaさま

    山中です。時代の流れは恐ろしいものです。
    特にハイテク機器のデザインのような刹那的なものを生業にしている者にとって
    製品化されないまま古びていくことはとても悲しいですね。
    すみません。パナソニック、ライカ、どちらのメーカーの方でいらっしますか。

    Comment by yam — June 12, 2010 @ 1:17 am
  8. 返信コメントありがとうございます。

    紛らわしい書き方をしてすみません、(株)リコーの者でございます(^^;)。特にデザインに関わる仕事をしている訳でもなく、こちらのBlogは個人的な趣味として楽しく拝見させて頂いています。(ついでにペーペーの若手ですので、様付けは不要です。)

    Comment by E-zuka — June 12, 2010 @ 11:11 pm
  9. [...] 私とパナソニックさんのおつきあいはとても長くもう15年以上になります。その間、家電製品の未来や、パナソニックという会社のデザインのあるべき姿について、何度も議論し、たくさんのものをデザインしてきました(製品化にいたらなかったモデルが死屍累々ですが)。今日のパナソニックのデザインに少なくない影響を与えちゃってるかもしれません。 [...]

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