ミニカーは実車の縮小ではない
乗用車のミニカーは、実物の単なる縮尺ではないのをご存知でしょうか。クルマの設計製造に使われるボディの三次元データを使って、例えば1/43とかに縮小して精密加工でモデルを作れば、完全なミニカーができるはずです。ところがそのようにして作られたモデルを実際に見てみると、ちっともらしく見えないのです。
実際にカーデザインの現場で、正確なスケールモデルを何度か見たことがありますが、その印象は一言で言うと、ぺらぺら。実物を見ると抑揚の強いスポーツカーのボディも、縮小するにつれて、フラットな四角いクルマに見えてきます。
この「スケールによる曲面感度の差」について、ちゃんと調べた文献に出会ったことはないのですが、デザインの現場ではポピュラーな知識です。駆け出しのカーデザイナーだった頃に、スケールモデルと実物の違いについては十分気をつけるよう注意されました。乗用車をデザインする時は、最初はスケールモデルを作って、拡大して実物大にするのですが、その時点で、改めてデザインし直す必要があるのです。
曲面のニュアンスと大きさの関係をちゃんと認識しておかないと、CADで工業製品をデザインするときにも結構厄介なことになります。コンピュータの画面ではどのような縮尺で表示する事も可能なので、なかなかスケール感がつかめません。
例えば腕時計などは、画面上では随分大きく表示できますが、この状態で角を柔らかく造形したつもりでも、できてみるとシャープ過ぎてびっくりというようなことが起こります。逆に乗用車では、表現が大げさすぎて、笑っちゃうようなものになったり。画面に人物のモデルを配置して比較してみたりしても、あまり効果はないようです。小さなものは小さいサイズで、大きなものは大きいサイズでデザインしろという事ですね。
最初の話に戻ると、市販のプラモデルやミニカーでは、原型師と言われる人たちが彫刻のように手で削って、実物と同じ印象になるよう曲面を作ります。ある意味「正確』ではないのですが、そうやって人の感覚で作った物が結局、一番「らしく」見えるのです。
Fig: INFINITI Q45 and OVO wristwatch, photo by Yukio Shimizu.
私の場合Webデザインが中心なのですが、手元の下書きを元に作ってみたら実際はスカスカだったり、キツキツだったりでなかなか思った通りになりません。
レベルの高いデザイナーならそんな事で頭を悩ます事は少ないのかもしれませんが。
記事からは少しズレていますが、スケール感もとても大事な素養なんだなと日々感じていたので、思わずコメントしてしまいました。
[…] Fonts for Web Designers and Logo Artists】 セリフフォントが多くて良いリンク。 【スケールによる曲面感度の差】 画面はリサイズが発生することを前提にデザインしなくちゃならない。 […]
本のタイトルは忘れましたが、タミヤ模型の戦車のプラモデルだったかを作るときの話に似たものがあったと記憶しています。そこでは確かにそのまま縮小するのではいけないと記してありました。
[…] 山中俊治の「デザインの骨格」 » ミニカーは実車の縮小ではない スケールによってデザインは異なる […]
[…] 山中俊治の「デザインの骨格」 » ミニカーは実車の縮小ではない (tags: design) […]
ずっとミニカーは忠実に再現してあるものとばかり思ってました!
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ミニカーは実車の縮小ではない – 山中俊治の「デザインの骨格」 乗用車のミニカーは、実物の単なる縮尺ではないのをご存知でしょうか。クルマの設計製造に使われるボディの三次元デ…
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