私の研究室がある慶應義塾大学SFCエクス・デザインの、展覧会のお知らせです。骨のあるようなないようなロボット Flagellaにもう一度会いたい人、まだ見てない人は是非どうぞ。
—
XD eXhibition 10
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 エクス・デザイン展 2010
展示会期:2010年3月14日(日)〜16日(火)
時間:2010年3月14日(日)13:00〜19:00 / 3月15日(月) 16日(火) 11:00〜 19:00
場所:AXIS ギャラリー (東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 4F)
主催:慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 エクスデザインプログラム
参加費:無料
HP:http://xd.sfc.keio.ac.jp
【展示概要】
慶應義塾大学エクス・デザイン(XD)の第2回展示会のご案内をお送りいたします。
今回はインターフェイス、ロボット、音楽、映像、プロダクト、メディアアートなど
多様な分野にわたる十数点の作品展示と技術デモを行います。
会期中、山中俊治、坂井直樹、岩竹徹らをはじめ本プログラムに関わる教員によるセッションも予定しています。
是非この機会にお気軽にご来場を賜りますようご案内申し上げます。
【参加者】
岩竹 徹(コンピュータミュージック)
筧 康明(インタラクティブメディア)
加藤 文俊(コミュニケーション論)
坂井 直樹(プロダクトデザイン)
田中 浩也(メディアインスタレーション)
中西 泰人(ヒューマンインターフェイス)
藤田 修平(映像製作)
山中 俊治(インダストリアルデザイン)
脇田 玲(情報デザイン)
及び各研究室の院生/学部生
【ゲストスピーカーセッション】
■ 3月14日(日)
・14:00〜15:30 岩竹 徹(本プログラム教員)
ゲスト:伊東 乾(作曲家・指揮者)
湯浅 譲二(作曲家・カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授)
・16:00〜17:30 山中 俊治(本プログラム教員)
ゲスト:大谷 俊郎(慶應義塾大学教授、看護医療学部、医学部整形外科、スポーツクリニック(兼担))
■ 3月15日(月)14:00〜15:30 坂井 直樹(本プログラム教員)
ゲスト:しりあがり寿(漫画家)
■ 3月16日(火)14:00〜15:30 脇田 玲(本プログラム教員)
ゲスト:小林 茂(IAMAS)
定員:50名(各回) 事前申し込み
お名前、所属、連絡先、希望日程を明記いただき、下記アドレスまでお送りください。
お問い合わせ先:TAIRA MASAKO PRESS OFFICE 担当 平昌子
masako@tmpress.jp
手もとにあるプラスチックの製品を見て下さい。真四角な箱だと思っていたものが、よく見るとほんの少しだけ台形になっていませんか。二つの箱を合わせて作られた製品の、真ん中のつながりをよく見ると、わずかに「くの字」に膨らんでいませんか。まっすぐな円筒だと思っていたプラスチックのキャップ、よく見ると少し、口の側が大きくなっていませんか。
プラスチックの製品は、熱く溶けたプラスチックを型に流し込んで、冷えて固まったところで取り出して作ります。そのために多くの場合、どちらかの方向に向かって台形に広がっています。まっすぐなものは型から抜けないからです。型抜きポンで作る板チョコが必ず台形になっているのと同じです。真四角の高級生チョコは違いますよ。ひとつ一つ切って作りますから。
appleの創始者スティーブ・ジョブスはこの台形が許せませんでした。Mac II以前のMacはみんなちゃんと直方体になっています。プラスチックは生チョコのように切って作るわけにはいかないので、型を分割できるように工夫します。型をバラバラにしながら取り出すと、側面が垂直のきれいな直方体が得られます。しかし手間をかけた分、部品の値段はグンと高くなります。これを専門用語でゼロドラフト(抜き勾配ゼロ)といいます。
あるとき、高いものばかり作っていたジョブスが会社を追われました。追い出した人たちは、Macをほんの少しだけ台形に直しました。その方が安く作れるからです。でも、私たちの目はごまかせません。ジョブスがいない時代のMacが、何となく普通なのはそのせいです。Macの板チョコ時代です。
ジョブスが戻ってきて、再び台形をやめました。初代iPodシャッフルやMac miniのボディは切り出されたように四角くデザインされました。ACアダプターでさえ、側面がちゃんと垂直になっています。まさにゼロドラフト、生チョコの復活。
iPhoneの背面ボディを作っているつやつやの曲面をよく見ると、ある所から前は台形に開くどころか丸くすぼまっています。これはひとつひとつ、磨いて作られました。非常識にコストがかかる製造方法です。ほとんどトリュフチョコ。
というわけでAppleのデザインは、ひとえにジョブスの台形嫌いが支えているのでした。板チョコに恨みがあるに違いない?
カンブリア紀の生物のスケッチから、オパビニアです。五つの目、象の鼻のようにのびた口、開いたエビのような胴体としっぽ、もうわけがわかんないデザイン。これも過去に紹介したハルキゲニアやアノマロカリスと同じく、化石の写真から私なりに書いてみた、「古生物学者ごっこ」の一枚です。
カンブリア紀は、生物の外観デザインが急速に多様化した時代です。
5億4千万年前、突然に生き物たちの間の食う食われるの生存競争が激化しました。それまでの生き物の多くは、海の中を漂うようにのんびりと暮らしていたとか。弱肉強食の世界になったきっかけは、お互いの位置が遠くからでもわかる「目」が生まれた事だと言われています。
その後、進化の歴史から見ると非常に短期間に、固い殻、とげ、爪、牙、高速で追いかけっこをするためのひれなどの器官を、生き物たちは次々に獲得していきました。現在の生物が持つ硬い器官の原型の多くがこの時代に生まれたそうです。
同時に、私たちには見慣れない、まるで地球外の生き物のような不思議なデザインの生物もたくさん生まれました。しかしこのオパビニアを始め、その多くは長く子孫を残す事なく消えていきました。
ある技術がきっかけで市場が活性化する。市場競争がさらなる技術開発を促す。開発の初期にはいろいろなアイデアが試され、奇抜なものもたくさん生まれる。そして、その多くがすぐに市場から消えてしまう。
なんとなく身につまされながら描いたスケッチです。
(スケッチの初出は雑誌AXIS。98年、アスキー出版「フューチャー・スタイル」に再掲載。)