奇人天才シリーズその5.5:檜垣万里子さん
分解大好き万里子さんは慶應義塾大学脇田研究室の出身で、学生のときに Ephyra 製作チームのリーダーでした。その頃からすっかりメカの好きな学生になり、人数の少ない9月卒ながらSFCを首席で卒業して、私の元に来てもう三年になります。
「骨」展ではアシスタントディレクターを務め、私と一緒に洗濯機の骨を探して工場を隅々まで歩きましたし、椅子も携帯電話もPCMレコーダーも分解しました。クロノグラフの百以上ある微小部品をひとつ一つアクリルの板の上に並べたのも彼女でした。
MacBook Airの分解でも、彼女に指揮を取ってもらいました。元に戻すことができたら万里子さんのものにしても良いという約束で始めて、元に戻したときには4時間が経っていましたが、今でも元気に動いているようです。
先日、iPhone 4の実物を初めて見たときの第一声は、「このネジに合う工具はなかなか手に入らないんですよ」。もう十分、奇人の仲間入りでしょう。天才ぶりはまだ見せてくれてはいないのですが、天然ではあります。
「いまさらながらiPhone 3Gのボディの秘密に気がつきました」という記事も彼女が自分の3Gを分解したことがきっかけでした。ひとつ一つ部品を楽しそうに見せてくれる彼女の報告を聞いているうちに、ボディの不思議なツールマークに気がついたのです。
この記事は大変大きな反響をいただき、桁違いのアクセスがあり、コメント欄でも議論白熱です。今のところ、おおざっぱに言うと、「普通はやらないことだが、こう考えると筋が通る」という私の主張に対して「アップルの意図はともかく、常識ではこう見るべき」という反論が技術屋さんから寄せられているという構図です。
今のところ「常識」の範囲内に、アップルが何故そんなことをしたのかを明確に説明できるストーリーは見当たらないと感じています。私は、一見非常識に見えても、筋が通っていると感じた考え方をいつも採用してきました。わくわくするブレークスルーはそこにしかないからです。
問題のツールマークをさらに拡大した写真をアップしておきます。なにが正しいかはアップルのみぞ知るですが、この議論自体を大いに楽しみたいと思います。自分で確認しましたっていう、第2、第3の万里子さんの意見が聞きたいですね。
ちなみに、30日にアップルストアでトークショーをやります。場所が場所ですが、このネタを扱う予定はありませんので、よろしくです。
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山中さん
こんにちわ。
私は学生の頃解体してからきちんと元に戻る商品はいい商品だと習いました。
この定義で言うとmac book airもいい商品です・・・
本日初めてREALDESIGNの人間工学特集を拝見しましたが
IDEOの方法論、テスト→改良を繰り返し商品化。というのは長い期間辛抱しなくてはいけませんが一番確実でかつ採用後の寿命は相当長い物だと思います。
ずいぶん前に山中さんのSuicaの展示@銀座松屋では、学生だったのですが相当影響を受けさせていただきました。何事も観察し繰り返しひらめきを必然に変える商品開発、だとおもいました。
常識とは大多数が同意見ならそこでは常識になってしまう、という現実があり、
悲しいのですがまねで良いという企業方針であれば、現場はそれで良かったりします。
ただ、企業の枠を外したときに果たしてそれで良いか?を考えると、
筋を通した一見非常識な理論が正しいこともあり、
デザイナーは企業という枠を取り、流れを変える勇気も必要だと感じました。
改めて骨展の大解剖のブースを思い返しました。
・・・マルチプライアーのリモコン設置場所、拝見するのが楽しみです。
そのままアップルストアへ向かいます!!
最終形で射出成型するとひけるので、それより大きく成型しておいて不良部分を削り取っているのだと予想します。
Tomokoさん
twitterでも、しばしば励ましの言葉を頂き、ありがとうございます。
suicaの展覧会にも来て頂いたのですね。
あの展覧会は私にとってもとても大切な物でした。
あれ以来人間工学の専門家のように言われるのは、全く気恥ずかしいのですが、引き続き勉強しております。
常識は、全く手強い物です。
私もそれにとらわれることがないよう、精進して参りたいと思います。
これからも応援して下さい。