曲面を作る
ふっくら、ぽってり、ゆったり、粘り着くような、流れるような、張りのある、しっとりとした…。こうした表現からどんな曲面を思い浮かべますか。
曲面が持つニュアンスには、それを作る素材の物性が色濃く現れます。その由来をはっきり意識する事は、立体物を作るデザイナーにとって、とても重要なことです。
固いものが研磨されてできる曲面、液体が表面張力で作る曲面、伸縮性のある膜を引っ張ったときの曲面、内部の圧力で膨らんだ曲面、成長によって形成された曲面。それぞれに全く性質が違うので、むやみに混在させる事は御法度。デザイナーは意識して使い分けます。
私が慶應義塾大学SFCで受け持っている演習授業では、「河原の小石」という課題を出題しています。
「木片を削って、河原に落ちている石ころに見えるオブジェを作りなさい。」
課題の目的のひとつは、頭でっかちになりがちな学生達に、自分の手でとことん立体とつき合う経験をさせることなのですが、もう一つ、自然の営みの中で生み出される曲面の「典型」を探させる演習でもあります。
面白いのは、ただ河原から石を拾ってきて、それをそのまま模写して木で作っても、少しも石には見えないことです。たくさんの石の中から、エッセンスを感じ取って典型的な石を作る事。それがうまくできると、本物の石より石らしい立体を作る事ができます。
先日、たくさんの木製の小石を持ってきた学生がいました。この課題の提出が終わってからも、半年間、少しずつ作ったそうです。求道者に出会って、ちょっと楽しくなりました。
写真は腕時計OVO(2007年)、撮影:清水行雄
はじめまして
立体というもの、多分私は3DCGを趣味ながらやっているので、形というものを再現することの難しさはよくわかります
多分こう言っている時点で私は理解していないのでしょう
形を正確に理解することと、デザインとは別方向のようなニュアンスに見えて、実はとても深い結びつきがあるのだと少しづつわかってきました
伝統的なもの、人類の創ってきた形の文化
そんなものを踏まえて次の時代のデザインが生まれるなら
しっかりと、形を再現することは、全く未知な形を作っていく上での踏まえるものとなるでしょう
3DCGで デザインをやる反面、既存のものを構築する点においてとても劣った部分を持つ者のたわごととして聞いてやってください
無益な乱文失礼しました…
hideakifujiさん、こちらへもコメントありがとうございます。
デザイナーにとっても3DCADは諸刃の剣です。
可能性が広がった分、曲面へのより深い理解が求められるようになりました。
先生の講義に参加した者です。
「石ころのオブジェ作成」、本当にいろいろ感じることがありました。
本物の小石を何回も何回も指でこすって触り続けることでどんな風にこの石が削られてきたのか、思いをはせることが出来ました。
あのような体験は初めてでした。
川のイメージを頭で浮かべながら木片を削ったとき、やっと自分が納得できるものができあがりました。
そうしてできた木片の小石を先生が握られた時、
「うん、気持ちいいね。」
と仰ってくれたことの感動は忘れられません。
赤羽さん
コメントをありがとう。
「川のイメージを頭で浮かべながら木片を削る」事ができたのは
すばらしいことだと思います。
課題を出した甲斐がありました。
しゃけです。
石はまだ、増え続けています笑
でも、毎回油断していると、一度掴んだ感覚から、同じ場所に同じ様な曲面が出たりしてしまい、似たようになってしまうので、違う形ながらも石に見せるようにするのが、大変でもあり、面白いところです。
削り終わったら、母に渡し、手でさすってもらいます。すると、不思議なことに(理由は大体検討付きますが…)艶が出てきます。オイルを塗るよりも、木の質感が出て、触り心地が良いです。
等々、試行錯誤していくのは、大変楽しいです。
これからも、削っていくと思います笑
ありがとうございました!
しゃけさん
「母に渡し、手でさすってもらいます。」
素敵ですね。とても暖かい情景が浮かびます。
今度また見せて下さい。