スケッチに込められる動き
スケッチに込められる動きは、必ずしも描かれる対象の動きではない。むしろ、観察者の動きこそが込められる。
少し離れたものを眺めていて形がよくわからないとき、私たちは、頭の位置をいろいろに変えてみます。それによって、見えなかった部分が見えることもあるのですが、理解を助けるのはそれだけではありません。
頭を動かせば手前にあるものは速く動き、奥のものはゆっくり動きます。スポットライトの反射や、磨かれた曲面への写り込みは、ほんの少しこちらが動くだけで意外に大きく流れます。私たちの認識力は、自分の動作に伴う環境の変化には非常に敏感なので、わずかな変化も見逃しません。それゆえに、少し視点を移動させるだけで、入り組んだ立体構造や、複雑な曲面の表情、質感までもが刻々と伝わって来るのです。
逆に言えば、一枚の写真やスケッチだけで立体を伝える事は大変難しいということです。写真家はそれをライティングで工夫しますが、私は一枚のスケッチに観察者の動きを入れることを試みます。それは、自分が動いたときに現れるであろう変化とペン運びとの関係を意識することです。
まず、少しでもこちらが動けば劇的に違ってしまうであろうアングルを選ぶこと。そして、曲面に沿って流れる光やハイライトの方向にペンを走らせること。暗く動かない陰の斜線はそうした流れに無関係のストロークで描くこと。角で切れっぱなしになるラインはあえて境界線を越えて走らせ、向こう側に回り込むラインは勢いを殺して小さく回すこと。などなど。
CADを使えば、光の変化をシミュレーションしながら、立体を自在に回転させられる現在、こうしたテクニックに、どれほどの意味があるのか。
それを問うのは野暮っつうもんです。
(上図はコクヨ”AVEIN”の初期の脚部構造スケッチ、2006年)
スケッチの妙…
『デザインの骨格』より 最近プロダクトデザイナーの山中俊治さんのブログ「デザイ……
[…] This post was mentioned on Twitter by AKEMI HARADA, 野口大輔. 野口大輔 said: ここまで考えて絵は描かなければいけないのか。勉強になるなー精進は続く。 http://lleedd.main.jp/blog/2009/12/22/movement_in_sketches/ […]
こんにちわ。
そうなんですね。しかし、これって知られているのでしょうか?
東大卒の山中さんがどこでマスターされたのか、、、。
したがって、プロダクトデザイナーの場合、デッサン、スケッチ、デザインスケッチの3つの違いを知っておく必要がある訳ですね。
Miharaさん、ご無沙汰しています。
コメントありがとうございます。
全くの自己流で、こう描くと立体感が気持ちいいなあ、どうしてだろと自分で考えていて、思い至った事です。考えついてからは意識してやるようになりました。
デッサンをちゃんと習った事がないので、画家の方が使うムーブマンという用語と、ここで私が意識している「観察者の視点の動き」が全く違う事なのか、結局同じ事を言っているのか、私も知りたいところです。
ご教授いただければ幸いです。
初めまして。palmと申します。アクシスや骨の展示に伺っております。アスタリスクも当時購入しその後中山様のデザインと知りました。職業は同業といっても良いかと思います。
デザイナーの描きますスケッチには第三者への思考伝達表現として「最速の手段」と考えております。また自らの思考を一旦 脳内から取り出し第三者の視点になり冷静に自己評価を行える行為と思っております。確かに立体化する事で明らかになるのですが其処には「時間的」コストなどかかりますので「スケッチ」が「最速」での「確かめ算」とも思っています。 25年程この仕事を行っておりますが。デザイナーには大切な思考するための「技術:道具」の様に思っております。
失礼致します。