パリの蚤の市にて

Technology and Design — yam @ 10月 4, 2011 1:15 pm

パリのモンパルナスの駅からさらに南へ地下鉄で10分ほどのところ、ヴァンヴでは、毎週末に蚤の市(骨董系がらくた市)が開かれます。L時に曲がった道路に1キロぐらいの範囲で、古い食器や家具や生活小物がずらりと並びます。

ギークな私は、ついつい古い道具や科学の実験道具などに目がいってしまいます。市全体を見渡すと、日本語や中国語の説明がついた、いかにも観光客向けの食器やアクセサリーの店も少なくないのですが、工具を主に売っているような店には素朴な店が多くて楽しめます。

一般的に工具は、とても合理的にデザインされているはずです。その原則は、世界中どこに行っても変わらないようですが、その合理的デザインの結果は、なぜか国によって全然違ってきます。もちろん素材や加工方法の違いがあって、工具の役割自体が違う場合も多いのですが、はさみやのこぎりのように、全く同じ機能、素材であっても民族独特の美意識の違いがくっきり現れます。そのことは、工具の持つ美しさが、必ずしも合理性からだけ生まれるのではないことを示しているように思います。

伝統的な工具は、誰か個人が完成された形をデザインしたものではなく、長い時間をかけて作り継がれる中で、ひとつの形に収束してきました。繰り返し模倣され、改良が重ねられていくうちに、個人のもくろみを超えた美意識が、研ぎすまされ、結晶化されています。その意味で、私に取って海外に行って工具を見ることは、その文化の底流に流れる美の根源に触れることなのです。

蚤の市には、使い方の見当さえつかないものもたくさんあって、店の人に説明を求めると、あまり流暢とは言えない英語で一生懸命説明してくれます。百年以上前のものもあるという(店の親父の説明を信じるならばですが)工具たちが乗っているテーブルの上には、土曜の朝の、のんびりとした時間が流れていました。

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