タイヤの刻みが一定じゃない話
昨年のモーターショーに行ったとき、ずらりとタイヤが並ぶメーカーのブースの前で、学生達に質問しました。「タイヤの溝は一定ピッチで切られていないのを知っていますか」。
学生達は最初きょとんとしていましたが、どのタイヤもじっくり見てみると、少しずつパターンの間隔が変化しているのに気がつきます。全く一定間隔のように見えるパターンでも、離れた場所を見比べると、ひとつのタイヤの中で歴然と間隔が違うのです。「さて、何故このようにピッチを少しずつ変えてあるでしょう」。残念ながらその場に正解者はいませんでした。
ご存じの方もたくさんいると思いますが、正解は耳障りな騒音を出さないための工夫です。一定ピッチで溝が刻まれているとそれぞれのブロックが一定間隔で地面に衝突するため、ある周波数のビーッという明瞭なノイズが発生します。しかし、パターンに変化があると様々なタイミングで衝突するので、全体としてざーっという周波数の幅のあるノイズになります(ホワイトノイズ化)。そうすることによって耳障りなロードノイズを防いでいるのです。
このノイズ低減方法は結構古い技術のようです。私が大根おろしをデザインするにあたって参考にした、職人技の大根おろしの効率の鍵である、「ランダムさの効用」がここにもありました。
写真はflickrよりLinderRox氏撮影のものを転載しました。中央のパターンが一定ピッチでないのがよくわかります。
フランスのヘリコプターのテイルローターも同様の理由で不等ピッチになっていると読んだことがあります。
てっきり、スリップしないために
間隔を変えているものだと思ってました。
でも、以前雑学テレビでやっていたような。。。
つい最近、車や電車の走行音について疑問に感じました。
何故そんな事が気になったのか自分でもよく分かりませんが、タイヤの溝にこんなトリビアがあったとは知りませんでした。
おろし金のエピソードもとても興味深いです。
デッサンにも通じる所ですが、モノを考えたり作ったりする際に気付かなければいけない大事な視点ですね。
肝に銘じておきます。
RYOさん
コメントありがとうございました。
有名なトリビアだと思います。
私は、ブリヂストンと仕事をしたときに知りました。
yoshiさん
コメントありがとうございます。
そういえば私もそれ聞いたことがあるような気がします。
tq3さん
コメントありがとうございます。
ここにある事例は、それほどの物ではありませんが、
複雑系の視点は、これからのデザインには欠かせないと思います。
[…] + 山中俊治の「デザインの骨格」 » タイヤの刻みが一定じゃない話 […]
[…] また少しずれますが、ランダムさの効用という点では @ Yam_eye 氏の以下の話にも通じるものがあると思います。 山中俊治の「デザインの骨格」:タイヤの刻みが一定じゃない話 […]