深澤さんの台形
“スティーブ・ジョブスの台形嫌い“については、たくさんの反響をいただきました。製造コストのために、垂直に作りたくても少しだけ台形にせざるを得ない状況は、多くのメーカーの技術者やデザイナーが日頃経験している事だと思います。
深澤直人さんが2006年にneonを発表したときに「垂直に立てて置くことができる」ことや「積み木のように複数個を自由に積み重ねることもできる」ことがさまざまなメディアを通じて強調されていました。
もうおわかりと思いますが、これも完璧なゼロドラフト(抜き勾配なし)を象徴したエピソードです。当時、「携帯電話を積み上げられることに何の意味があるの?。neonを複数持つ人なんていないし」と首を傾げる友人に、これは実用性を訴えているのではなく、スタイルへのこだわりを伝えているんだと思うよと説明した覚えがあります。一見ただの直方体に見える携帯電話の多くは、実際にやってみるとちゃんとは積めない。ふたつが完璧な平面で接するができて、どの向きにでも積み上げられることは、それを目的としない工業製品としては希有なクオリティなのです。
製造技術に精通した深澤さんの、ゼロドラフトへのこだわりはスティーブジョブス以上かも知れません。プラスマイナスゼロにおいても見事な垂直平面を見せてくれます。
そう考えると、彼がデザインしたTrapezoid(台形)という名前の腕時計は、やむをえずそうなったんじゃなくて、台形に作りたかったんだぞということを念押しするネーミングなのかも知れません…なわけないか。今度聞いてみよ。
そういえば、同じく深澤さんのiida携帯電話のプリズモイドも台形で、「角錐台」の英訳語がそのまま名前になっていますね。
塗装の色・質感や面取り等細かなの寸法の積み上げからか、台形工業製品らしい安っぽさはまったく感じません。手に持ったときやポケットに入れたときの収まりもいい案配です。
が、やはり折りたたみ状態を開く動作から見ると逆の勾配なので、片手で容易には開けません。
私はケータイのヘビーユーザーではないので気になりませんが。
あと、黒ではなく、限りなく黒に見える焦げ茶というのも、見るたびにニコニコ(ニタニタ)してしまいます。要はとても気に入って使っています。
mnzさん
コメントをありがとうございます。
深澤さんの造形は形の意図がいつも明快で徹底していますね。