Further Step

SFC — yam @ 3月 14, 2010 4:11 am

spp2009016

「スポーツ用義足の膝継手、板バネ等の開発」紹介パンフレットより。

Further Step

人の体と、人のつくりしものが一体となり、世界を駆け巡る。私たちはそんな夢を「義足」に託しました。

義肢は元々、失われた四肢を補完するために存在しています。機能と外観を健常者に近づけることが理想のデザインでした。これまでの義足は、それがどのようなデザインであるかさえ知られないままに、衣の下にありました。しかし、義足のアスリート達がスタジアムを駆け抜けるとき、隠すものから見せるものへ、そして賞賛されるものへと、義足が変わりつつあることに気づきます。技術は、より速くより高く躍動しようとする人体のために、新しいかたちを生み出し始めたのです。

とはいえ、スポーツへの扉は開かれたばかり。現状のアスリートたちの足は、既存の限られた部品をかき集めて、試行錯誤を繰り返しながら作られています。志のある人たちが走り始めた今こそ、誰もが愛するスポーツのために、アスリート達をより美しく躍動させるための新しい義足が必要なのです。

私たち慶應義塾大学SFC山中俊治研究室は、エンジニアリングとデザインを通じて、人と人工物の新たな交わりを研究しています。多くの人のための機能的で美しいスポーツ用義足を作りたい。そして、スポーツを愛する選手たちのメダル獲得を、可能な限りサポートしたい。そのような思いでスポーツ用義足の研究開発を進めています。

*この研究は「スポーツ用義足の膝継手、板バネ等の開発」として、株式会社今仙技術研究所および財団法人鉄道弘済会と共同で、平成21年度障害者自立支援機器等研究開発プロジェクトに採択されました。

今日はXD eXhibition 10の初日。大谷先生とのトークショーも予定されています。このブログを見て、会場に来てくれた人、是非声をかけて下さい。

(写真撮影:清水行雄)

6 Comments »

  1. 山中先生が義足に取り組んでおられること、「骨」展で知りました。

    「医学と芸術展」でも展示されていた昔の義足に比べ、機能・デザインともに数段飛びぬけた作品(製品)が今後生み出されることに、大きな期待と喜びを感じます。

    「医学と芸術展」の対談も大変楽しく拝見しました。”洗練された機能の結果としての有機性”を、美しい文章で表現されていたのが、とても心に残りました。

    本日のトークショーにお伺いします。とてもとても楽しみです。

    コメント by Lafie — 3月 14, 2010 @ 7:11 am
  2. 山中先生、初めまして。

    南アフリカのオスカー・ピストリウスという両足義足の選手が、北京オリンピックに挑むことを知った時、
    二つの大きな可能性を感じました。
    一つは、テクノロジーとデザインの力で、オリンピックとパラリンピックが一つになる時代がくるのではないかということ(実際には、障害は奥が深いので全ての競技がというわけにはいかないと思いますが…)。
    そしてもう一つは、テクノロジーとデザインの力で、障害者が人間の力を(局所的に)超え、特殊能力者になる日がくるのではないかということです。

    そして、その特殊能力によって、障害者だけでなくあらゆる人を幸せにすることができたら…、と、
    最近はそんな夢を描いています。

    コメント by architraveler — 3月 15, 2010 @ 2:41 am
  3. Lafieさん

    ご来場頂きありがとうございました。
    また、とても良い質問を頂きました事、合わせてお礼申し上げます。

    骨展に展示した義足のモックアップは、まだ何をしてよいかもわからず、こちらの意思を明快にするためだけの旗印のようなモデルでした。多くの人の協力を得て、ようやく実際に走行できるものになってきた事を、とてもうれしく思っています。
    これからも応援して下さい。

    コメント by yam — 3月 17, 2010 @ 7:57 am
  4. architravelaerさん、初めまして。山中です。

    義肢装具については、まだまだ勉強を始めたばかりですが、私も
    オリンピックとパラリンピックが一つになる時代が来ることを願っています。
    コメントをありがとうございました。

    コメント by yam — 3月 17, 2010 @ 8:05 am
  5. […] 特に義足のデザインについての問題点の指摘は、我々がいま進めているプロジェクトの出発点とほとんど同じでした。つまり、義足は本物そっくりがベストと思われているけど、本当にそれでいいのか、という疑問です。機械を使い、人工素材を使う以上、人の形に似せることと機能は原理的に相反します。本物に似せようとするほど、その違いがあらわになる。だからこそ、人の足を超えた美しい義足を目指すべきではないか。著者が、現場を取材して同じような問題意識を持ってくれたのだとすれば、それはとても心強い事です。 ドキュメンタリーではないので、小説的な「都合の良いこと」が少しばかりあるのはお約束。「愛」が主題なので主人公が直面する困難も主にそちら方面であり、例えば「デザインに対する無理解」というような我々の世界ではおなじみの面倒ごとは登場しません。この小説に登場する人たちはみんなデザインに対する理解が深くて、羨ましくなってしまいます。 […]

  6. […] Further Step → Prototyping & Design […]

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