孤独な時間
日産自動車に桜井眞一郎という人がいました。名車スカイラインの主設計技師を6世代にもわたって勤め「スカイラインの父」と呼ばれています。私が入社したときにその桜井さんが、技術系入社式の壇上に上がって、話をしてくれました。
「出世して、社長になって高い給料をもらいたいがために、この会社に入ったという人は、ここにはいないと信じます。」
少し挑発的な発言から始まったその講演は、ものづくりの喜びに満ちていて、大変印象的なものでした。メモもないので、不正確かもしれませんがこんな言葉が心に残っています。
「新しい車の開発が始まると、私は3ヶ月ほど自室にこもります。大きな図面台に向かって、サスペンションの軸の角度やエンジンの位置をひとつ一つ検討し、全体の計画図を書き上げるのです。長く孤独な時間です。」
出世を求めない桜井さんは、その4年後にはスポーツカー開発の子会社に移籍してしまいました。職人肌だなあと思いました。自分もそうありたいと。
私は今、その時の桜井さんとほぼ同じ年齢になり、今日もCADに向き合っています。道具は変わってしまいましたが、ものづくりの喜びに満ちた孤独な時間に迷いなく向き合えるのも、あの言葉を聞いたおかげかも知れません。
大学の研究プロジェクトでも、学生からデータを取り上げて自分で手を入れてしまう私ですが、学生たちに出世を求めるなとまでは言えません。…言ったかな。
(CAD図面はコクヨ「アヴェイン」の初期のもの)
興味深い記事です
何かの使命を持って生きているのが本質的に人間というものだと思います。
それがどういう形式であろうと
湧き上がってくる情熱、趣味とか、仕事でも自分にとって価値の見出せる仕事とか…そういったものについて出世とか金とか関係ないです。
自分のやっているCGはほとんどお金になっていません、
本業というか食いつないでいく手段は、時にパソコンを使ったものでも趣味とか情熱とか別のカテゴリーです。 仕事を楽しんでやるというか、仕事に対して何か世の中に役に立ってくれればいい、自分のした作業がお客様の喜びになってくれればいい、そう思ってやったときしんどい仕事でも後で充実感が伴います、去年は、少し写真屋のデータをフォトショップで修正する仕事やっていました、