ロボットの遺伝子

Bones,Works — yam @ 10月 29, 2009 9:09 am

yumihiki52

原音再生なんて言葉もそろそろ死語になりかかっていますが、かつてのオーディオ技術者たちは、蓄音機の音がいつかは本物の楽器の音と区別がつかなくなり、コンサートに取って代わることを夢見ていました。しかし今や、原音再生のこだわるのは一部のマニアだけで、ヘッドホンで手軽にどこでも音楽を楽しめることの方が、オーディオ技術の大きな市場となっています。人々は、iPodや着うたのような、記録されたデータだからこその音楽の新しい楽しみ方を見いだしたのです。

振り返ってエジソンの蓄音機を見てみると、どう見ても気軽に持ち歩けるものではありませんが、オーケストラに比べれば十分に小さな卓上の箱でした。「音を信号化すれば聞くための場所を選ばなくなる」という新しい価値は既にそこにあったと言えるでしょう。

技術者は常に性能向上を目指します。しかし新しい価値は、性能のいかんにかかわらず、はじめからその技術自体に遺伝子のように組み込まれているのです。

今、エンジニアたちは「人と同じように」活動できる、あるいは「人と見まがうような」ロボットを作ろうとしています。それは「原音再生」と同じように、技術者が通るべき通過点です。しかし将来は、まったく別の、ロボットならではの魅力が私たちをとりこにするのではないでしょうか。その時、未来の人々は、その魅力が実は最も古いロボットにも備わっていたことに気づくはずです。

photo by Yukio Shimizu

4 Comments »

  1. おはようございます。
    子供の頃、44回転や35回転のソノシートというペランペランのレコードを小さなプレイヤーで聴くのが楽しみのひとつでした。
    それから少し大きくなって、ステレオをねだって買ってもらい、好きな歌手のLPレコードを揃えたりしていました。今でも大切に持っています。いつか、またステレオで聴きたいと。
    詳しくは全然知らないのですが、日本はロボット産業ではトップクラスと聞いています。
    近い将来、人々はロボットと生活するようになるのかな・・・と思うと、ちょっぴり楽しみではありますが、そのロボットが「人と同じように」活動出来たり、「人と見まがうような」ものであるのはちょっと・・・。
    おっしゃる通り、「まったく別の、ロボットならではの魅力」を持つことを期待します。
    でも、私は見られますか?そのロボット。

    コメント by powaro — 10月 29, 2009 @ 10:04 am
  2. powaroさん、こんにちは。

    私もソノシートを聞いていました。ステレオですらない小さなプレーヤーでしたが、記憶にある音色は不思議にクリアです。おかしなものですね。

    ロボットならではの魅力が商品化されるのは、そう遠くないと思います。私は見るつもりです。

    コメント by yam — 10月 29, 2009 @ 4:13 pm
  3. […] This post was mentioned on Twitter by Hitoshi Yamada, Yutaka Fukui and kinofumi, Tae Nakayama. Tae Nakayama said: ロボットの遺伝子。いいお話でした。 http://bit.ly/25PXAM […]

  4. […] 山中俊治の「デザインの骨格」 » ロボットの遺伝子 (tags: tech !) […]

    ピンバック by links for 2009-11-07 « fragment — 11月 8, 2009 @ 12:01 am

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