骨折!

Bones — yam @ 8月 19, 2009 10:37 am

yumihiki_finger

昨日は休館日。

玉屋さんの「弓曵き小早船」の調整を見に行ったら、意外に深刻な様子。なんと朝になって、弓手の右の親指の部品が折れてしまったというのです。前日まではちゃんと動いていたのですが…。

このからくり人形の最も複雑で高度な機構は、実は右手の親指にあります。

矢を射るにあたって、まず右手で矢の末端をつかみ、矢台から持ち上げます。このとき親指は、肘につながる細長い棒のしなりを使って、人が少々たたいても落とさないぐらいしっかりと矢を挟みます。そのまま弦にかけて引き絞るのですから大変な力です。一方、弓を引いたら、タイミングよく放さなければなりません。そのために、指の付け根の小さなロック機構がすぽんと抜けるようになっています。

小さな部品に強い力を加え、なおかつ是妙なタイミングでその力を解放する、その精巧な機構のの一番肝心な場所が折れていました。私はそれを見たとき、残り12日間の会期中、デモができないことも覚悟しました。

ところが、玉屋さんは、この後に同行した撮影の合間に、カメラの前にセットされた状態のまま、魔法のように直してしまったのです。使った道具は小さなポーチに携行したものとスタジオにあったカッターナイフだけ。

三百年の歴史を持ち、全国に散らばる歴代の作品のメンテを一手に引き受ける九代目尾陽木偶師。そのすごさを見せつけられた瞬間でした。

なので、今日の夕方のギャラリーツアーには動くところも見せられるはずです。

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