Stem(茎)と呼ばれる部品

Bones — yam @ 4月 18, 2009 6:16 pm

stem

 

この写真のナイフのようなものはステム(stem: 植物の「茎」やワイングラスの「脚」)と呼ばれる部品です。何に使われるものかわかりますか。

最近私の机の周りには、「骨」展で「標本室」と私たちが呼んでいるスペースに展示するための不思議なものがいろいろ集まってきています。「標本室」では、「人のつくりし骨」を収集して展示しようととしているのですが、これもその一つ。

実はこれは、老化やリウマチが原因で股関節がうまく機能しなくなってしまった人の治療に使われる人工股関節の部品です。下部のナイフのような形状の部分が大腿骨に埋め込まれ、上部のくびれの先の円筒が腰の人工の球体関節につながります。

チタン合金製のこの部品は、人の大腿骨のカーブに沿って、しなやかに先細りになっており、上端と下端は鏡面仕上げ、中央部はマット仕上げ、上の方の幅の広いところはチタン粉末を高温で吹き付けた粒度の粗い仕上げになっています。使い分けられた質感がとても美しく手触りも良いのですが、もちろん、このような手の込んだ表面処理が、見た目や触り心地のために施されているわけではありません。骨に埋め込まれ、長い間に骨としっかり一体化するよう長年にわたって工夫された結果なのです。

いろいろな人の大腿骨に合わせるために、様々なサイズ、形状のステムがあるのですが、それらがずらりと並んだ様は、美術工芸品の展示のようです。

4 Comments »

  1. 大腿骨に打ち込みやすくするためと球状関節に接続するために鏡面仕上げされている一方、中断(中段?)は生体組織となじみやすくするためつや消し仕上げ、しかも打ち込む部分と骨の外に出る部分は表面の荒さが異なり、リブも高さも本数も開始位置も異なっている、など、見れば見るほどよく考えてつくってあると感心させられます。

    コメント by 伊藤 — 4月 19, 2009 @ 11:33 am
  2. 伊藤さん、コメントありがとうございます。そうですね、本当によく考えられています。
    上の方の荒い部分はプラズマ溶射と言う方法でチタン粉末が吹き付けられて多孔質になっています。この部分も骨に埋め込まれ、時間と共に骨の組織が入り込んでしっかりと固定されるようになるそうです。関節に近いところでよりしっかりと固定する工夫なのでしょう。
    ご指摘の誤字を「中央部」に直しました。

    コメント by yam — 4月 19, 2009 @ 2:25 pm
  3. […] 再来週には21_21 DESIGN SIGHTに搬入します。「標本室」と私たちが呼んでいるコレクションの目玉です。骨だけとはいえ300キロもあるのですが、21_21に本当に入るのかなー。 […]

  4. […] 写真は、美術品のように美しいと大谷先生が紹介してくれた最新の人工膝関節です。酸化ジルコニウムという耐摩耗性に優れた特殊合金製の深いグレーが何とも気品があります。すばらしい光沢ですが、これは通常の工業製品の鏡面仕上げとはレベルの違う高精度研磨がかけられているからです。わずかな凹凸でも長年使っているうちに不具合に成長するので徹底して平滑にしてある。まさに機能美ですね。医療用品は基本的に「展示」を行わないのですが、骨展では、大谷先生の力添えで展示することができました(これも)。 […]

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