南の島で出会った北欧のライン

Technology and Design — yam @ 3月 1, 2011 12:49 am

先日、種子島に取材旅行に行った時、35人乗りの小さな飛行機に乗りました。このあまり見かけない形の飛行機はサーブ 340Bと言います。そうあのスエーデンの自動車、サーブと同じブランドの飛行機なのです。実はサーブはもとは日本の富士重などと同じように航空機、軍需品のメーカーであり、そこから自動車部門が独立してサーブ・オートモビルとなりました。

種子島まで35分の短いフライトでしたが、搭乗が折りたたみの小さなタラップだったり、各シートの前には気分が悪くなったときのための袋が3つずつ(そんなに要るのか?)用意されているなど、小型機らしい体験がたっぷり。現在の大型機と違って貨物室が客席の後方にあり、「重量のある貨物が搭載されたので、バランスを保つために前6列のお客様からご搭乗下さい。」などという珍しいアナウンスも聞こえます。

私は飛行中、一番後ろの席からエンジンのカーブをながめながら、サーブ92や900などのかつての名車たちを思い出していました。デザイナー達の交流があったかどうかはわかりませんが、ラインの癖がそっくりなのです。以前このブログで、第二次大戦当時の戦闘機のデザインにはそれぞれのお国柄が現れると描きましたが、この航空機も車もまさに「サーブ」のラインでできていました。

それは一言で言うと、カジュアルで人なつこく、優しさのあるどこか女性的なラインです(全然一言じゃないし、笑)。こういうニュアンスは結局比喩で語るしかないのでうまく伝わるかどうかはわかりませんが、写真でもボーイングなどの力強さとは違う優しさ、悪く言えばひ弱さを感じてもらえるでしょうか。

実は自動車会社にいた頃、サーブのラインがとても好きだったのです。日本の南の方の島で、なつかしい北欧の文化に出会った素敵なひとときでした。

1件のコメント »

  1. いつも、拝見してます。
    サーブ社といえば、やっぱり「ドラケン」ですね。
    あの、ダブルデルタ翼は、デザイン優先だったのか、機能を追求したら、必然的にああなったのか・・・。
    我々建築に関わる者も、機能を追い求める過程で、デザインが良くなった。というのが理想です。
    自動車のサーブも、このサーブ 340Bも、この点がすばらしいですね。

    コメント by aoyama — 3月 2, 2011 @ 5:18 pm

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