扇風機を改良したかったわけじゃなかったダイソン
昨日行われた、ダイソンのデザインエンジニア Martin Peek 氏とのトークショーは、80席の会場に、百人近い人が参加してくれて立ち見の大盛況でした。印象に残ったMartin氏の発言をメモしておきます。
「アイデアを出すところから製品の出荷まで、一貫してひとりのデザインエンジニアが担当する。モデルを作ってばかりいればモデルのクオリティは上がるけれども、それでは本当のイノベーションは起こせない。」
「デザインエンジニアは全員、いつもスケッチブックを持ち歩く。」
「とにかく、テスト、テスト、膨大な試作とテストを繰り返す」
「段ボールはいいモデル素材だ。加工しやすく、どこにでもある。」
「ダイソンは新卒を採用する。その柔軟さが必要だから。」
「DC8の主要部を設計したときは本当に忙しかった。でも学生の時と同じだとも思った。ゼロから何もかも自分でやったから。日本の人たちほど働いた訳じゃないけど一日10時間は働いたと思う。」
「市場にある物を少しばかり改良して、より優位な物を投入するというような発想はそもそもダイソンにはない。ジェームズ・ダイソン自身がそういうことには興味がないのだ。」
「デザインエンジニアのユートピアのように聞こえるかも知れないが、日程のプレッシャーは相当に厳しい。」
“はじめから扇風機を改良したかったわけではなくて、高速空気が引き起こす面白い現象を何かに使えないかと考えたら、たまたま扇風機だったのではありませんか?”という私の質問に対して「その通り。ダイソンは空気の流れの技術を売る会社だ。研究室では科学者達がいつも新しい現象を探し出しては、何かに使えないかと考えている。」
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最後の質問は、私自身が確かめたかったことでした。一般的な企業は市場のニーズから出発して何かを作ろうとしますが、ダイソン社では、個人の好奇心が開発の根源的な動機になっているようです。その自由な研究体制と、水平展開する柔軟さに感動しますね。
トークショーの後、「自分の会社のすばらしさを、あらためて実感した」というMartinと話していて、思わず「かつての本田やソニーだって…」と口走ってしまいました。「かつて」ではないことを祈ります。
[…] This post was mentioned on Twitter by masalive and Masaki Matsuzawa, Shunji_Yamanaka 山中俊治. Shunji_Yamanaka 山中俊治 said: 昨日のトークショーのまとめをブログアップしました。「扇風機を改良したかったわけじゃなかったダイソン」 http://ow.ly/2jccr […]
[…] そしてまた山中俊治さんのエントリに面白い記事が。 扇風機を改良したかったわけじゃなかったダイソン […]
はじめまして。
twitterからこちらのブログを知り、いつも興味深く拝見しております。
「デザインとは…」と語れるほどではないのですが、
やはり自分が作ったものや考えたものに対して、
外から冷静に見たときに
違和感があればそれをそぎ落としていくこと、を意識しております。
違った分野ではありますが、ブログやtwitterを拝見してダイソンの展示にもとても興味を持ちました。
展示会には時間を見つけて足を運ぼうと思います。
日本でダイソンは特許を申請していたみたいだけど、東芝が20年前に出した実用新案とそっくりだった。そのため、特許として認められてるのか不明。この辺も聞いていただけると、良かったかな。
http://www.telegraph.co.uk/technology/news/6377644/Dyson-fan-was-it-invented-30-years-ago.html
お久しぶりです。いつもエスプリが効いてますね。
あまりにも普段、学生に言っていることと同じことが書かれていたのでビックリでした。最小の投資で最大の収益を上げることばかりしか頭に無い日本では考えられません。
「富」を全部、土地に埋葬してしまっている日本が、本当に新しい発想に投資する国になって欲しいです。結局、この問題はそこに帰結してしまうのではないでしょう。
三原さん
コメントありがとうございます。
本当に好奇心や探究心に投資する国になって欲しいものです。
カイゼンを重ねて執拗に完成度を高めることで集めた富でした。
その徹底ぶりは、職人的で美しくも見えました。
しかし結局、そこには本物の探究心が欠落していたのでしょうか。
重い問題です。これからもご指導ください。
追伸:FPの最終号、私も持っています。
受賞しましたね「2010年度グッドデザイン大賞」
21世紀の基本形ってとこでしょうか。
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[…] 山中俊治の「デザインの骨格」 � 扇風機を改良したかったわけじゃ…昨日行われた、ダイソンのデザインエンジニア martin peek 氏とのトークショーは、80席の会場に、百人近い人が参加してくれて立ち見の大盛況でした。印象に残ったmartin氏の発言をメモしておきます。 「アイデアを出すところから製品の出荷まで、一貫…はてなブックマークより […]