私が出会ったart&designの本

Works — yam @ 5月 31, 2010 11:32 am

3books

先日の展覧会「私が出会ったart&designの本」に出品した3冊の本と紹介文です。

デザイナーとは自分が何者であるのか、何を生み出そうとしているのかを、常に自分自身に問いかけ続ける職業であると思います。

その問いかけを必要とする理由は、デザインと言う行為が、自己矛盾をはらんだ刹那的なバランスの上に成り立っているからです。デザインは、人や社会の要請に応えるための、広範な知識や価値観の統合作業であると同時に、一方で、創造の起点を内的な動機に依存しする、きわめて個人的な創作活動でもあります。

それ故にデザイナーは、最初の一歩を踏み出すためのインスピレーションの元となる書籍を待望し、ひとたび歩み始めてからは、自らの位置とつま先の方向を、歴史的かつ社会的に確認するための文献を必要とします。

この3冊は、私に啓示を与えてくれた光源であり、居場所を教えてくれる地図でもありました。「欲望のオブジェ」は、教条的に批判されがちなデザインの資本主義的な役割について、冷静な歴史的視点で解き明かしてくれました。「世界で最も美しい実験」は、実験装置のデザインを通じて、偉大な発見をした科学者たちが、自らの哲学的思索を現実世界に落とし込んで行くプロセスを教えてくれました。 Design and the Elastic Mindは、人が作るものと人の肉体との間の生理的な交感を収集し、様々なインスピレーションを私に与えてくれています。

欲望のオブジェ – デザインと社会 1750-1980
アドリアン・フォーティ 著 高島平吾 訳
発行 1992、鹿島出版会

世界でもっとも美しい10の科学実験
ロバート・P・クリース(Robert・P・Crease)著
発行 2006、日経BP社

Design and the Elastic Mind
Paola Antonelli 著
発行 2008, The Museum of Modern Art, New York

「欲望のオブジェ」は、最近読ませていただいているブログに「出版禁止処分」として紹介されていました(笑)。出版禁止の理由は、「若いデザイナーが、「ああ、俺が夢見ていたデザインなんて社会にとって何も意味が無いんだ!グレてやる!」と思い込んでしまうから。」だそうです。

グレなかったと思うけどなあ。それともグレたのか。

3 Comments »

  1. […] This post was mentioned on Twitter by Ryo.Yos, rental_watanabe 2.0, ちんくる, donguri, YOTSUBA Miki and others. YOTSUBA Miki said: 山中俊治の「デザインの骨格」 » 私が出会ったart&designの本 http://bit.ly/cG2HF1 「欲望のオブジェ」絶版の上に、プレミアで安くても2万円か……。Amazonだとさらに高い……。 […]

  2. museum of art and design new york…

    […] 山中俊治の「デザインの骨格」 ” 私が出会ったart&designの本 for museum of art and design new york on museum of art and design new york […]…

    トラックバック by museum of art and design new york — 6月 5, 2010 @ 4:06 pm
  3. […] なかなか読む時間がなかったのだけれども、山中俊二さんおすすめの本だったこの本をやっと読み終わった。面白い! 著者の専門は哲学なのに、科学実験がテーマ、つまりただ単に科学実験の紹介をする本ではない。芸術は美しいと言えるけれども、科学実験は、時に科学者は美しいというけれども、普通の人からみても美しいと言えるものなのかということから話がはじまり、そもそも美とは何なのかというところまで議論が進む。普段特に深い事を考えずに人工物を美しいと思ってみていたけれども、言われてみればなるほど納得できる。 […]

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