がんばれ、ウィルコム 2

Works — yam @ 2月 21, 2010 10:45 pm

ax520n

ウィルコムが会社更生法の適用を申請したというニュースを聞いて、一緒にものづくりの夢を見たいろいろな人の顔が浮かびます。写真のAX520Nもそんな人たちと作りました。これが私のデザインである事は、ほとんど知られていないのですが。

「新しいエアエッジ通信カードのデザインがいまいちなので、直してくれないか」という依頼を受けたのは2004年のことでした。すでに開発は完了していて2ヶ月後には発売予定なので、中身はそのまま形だけ急いで変えてくれという依頼。

W-SIMTTなどの、基礎技術開発から参加したプロジェクトがまさに架橋であり、製品の外観と内部構造は一体に開発されなければならないという事を何度も訴えていた時期でした。当然、「デザインとはそういうものではない」と一蹴。

…したはずだったのですが、熱血漢のウィルコムの人たちに食い下がられて、引き受けることに。

既に出来上がっていた試作品は、トイロボット風のデザインでした。そのロボット君の図面を見ながら、どうしたものかと考えている最中に、ある部品が目にとまりました。それはアンテナのコアパーツ。

この新製品の売りである高効率でコンパクトな2本のアンテナの内部には、電波を効率よく受けるために小さなジグザグ形状の金属板が封入されていました。その繊細な機能美に感銘を受けた私は、アンテナ全体を透明にし、その回転軸を起点とするプレーンなスタイルを提案しました。

もとより内部を露出する事など想定されていない設計だったので、きれいに見せるための接着面や回転軸の構造まで提案し、一ヶ月のやっつけ仕事のはずが、いつの間にやら半年かけた本格的な開発に。

結果的には、5年たった今も売られていて、この業界の製品としては画期的なロングセラーになりました。その間に会社の方が危うくなってしまうのですから、わからないものです。

がんばれ、ウィルコムの人たち。

2 Comments »

  1. 私のエンジニアとしての体験から。この「ガワ」のデザインで自分たちの製品が変貌を遂げた瞬間、多くのエンジニアが開発とデザインとの協調作業の重要性に気づくキッカケになっていると思います。開発段階からこのコンセプトを導入していたらもっと理想に近づけたかもしれない、次こそ。。。なにか使命感に似た感覚を覚えました。「ガワ」のデザインは布教のための必要悪かもしれません。

    コメント by yagi — 2月 25, 2010 @ 12:55 pm
  2. yagiさん

    なるほどです。
    「ガワ」のデザインは布教のための必要悪。
    どんな状況でも志を失わないために、心に留めておきます。
    ありがとうございました。

    コメント by yam — 2月 25, 2010 @ 9:32 pm

RSS feed for comments on this post. TrackBack URI

Leave a comment

Copyright(c)2024 山中俊治の「デザインの骨格」 All rights reserved. Powered by WordPress with Barecity