クリスト!

Off — yam @ 2月 14, 2010 8:42 pm

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正直に言うと「クリストとジャンヌ=クロード展」は、それほど意気込んで見に行ったわけではありませんでした。なぜって、彼らの作品って、あの大風呂敷を現地で見ることに価値があると思っていたから。でも21_21 DESIGN SIGHTのひんやりした空間にずらりと並べられたクリストのドローイングを見て、久しぶりに、しばらく動けないほど感動してしまいました。

建築やランドスケープ・アートなどの巨大プロジェクトのスケッチを見る事には、アイデアの源泉に触れる喜びがあります。しかし、結局その価値は「本番」に付属するものであり、それを鑑賞する事は、実物に触れる感動を補強することでしかない。そう思っていました。でもクリストのそれは違いました。

何と言う輝かしい光景。存在感。これから作ろうとする未来の光景を、これほど明瞭にイメージできるものなのか。さほど多くはない色材を殴りつけるようなタッチで置いていきながら、完璧にコントロールされた色相と明度。現実にはあり得ない空中視点から透視される正確無比な光と陰。ビジョンと技巧の完璧な出会いに打ちのめされました。ああ、この人はこの絵だけでも人類の歴史に長く残る人なんだ、と。…いまさら、でしょうか。

会場ではサイン会が行われていました。この偉大な人物と同じ空間にいる事がうれしく、そのまなざしの変化やペンの持ち方のひとつ一つを見逃したくなくて、じっとたたずんでいたら、

「何見てんの?」と娘。

「え、あー…クリスト…さん」

我ながら間抜けな答えでした。結局、ご本人には声をかけることすらせず。でも良いのです。話してみたいと思わないほど憧れることができて大満足。また見に行こ。

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