4本脚のニワトリ

Bones,SFC — yam @ 7月 27, 2009 1:53 am

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昨日の「骨」展のワークショップでは皆さんにいろいろな絵を描いてもらいましたが、最初に描いてもらったのはニワトリでした。

18年前、東京大学の助教授として、初めて研究室で持ったときのことです。私の部屋に集まった学生達に、今回と同じように「鶏を思い出して描いてごらん」と問いかけました。その時、ひとりの学生が4本脚のニワトリを描いたのです。2本であることを指摘すると「ああそうか、羽が前脚ですもんね」と言って彼は納得していましたが、その場にいた学生達にも、後に伝え聞いた先生達にも結構衝撃でした。実はその生徒の成績は、学科でトップだったのです。

最近になって、慶應大学でも60人ほどの生徒達に描かせてみたところ、やはり2人が4本脚のニワトリを描いています。昨日のワークショップでもお一人、4本脚のニワトリを描いた方がいらっしゃいました。

いつも見ているものでも記憶に頼って絵にしてみると、驚くほど覚えていないものです。これはどうやら私たちの記憶の仕方と関係あるようです。

人は、これまでの人生の中で見たニワトリをすべて頭に入れているはずはありません。そんなことをすればたちまち頭の中は、過去に見た写真や絵本のニワトリでいっぱいになってしまうでしょう。私たちの脳はニワトリを見る度に情報を整理して、他の動物と区別するために必要な特徴だけを蓄えます。このことによって新たにニワトリを見たときに、過去のものとは少々違っていても、これはニワトリだと一瞬で理解するのです。

こうした高度な抽象化による認識は、いまだにコンピュータでもまねができないものです。おそらく、脚を4本描いた人にとって、「ニワトリ」を識別するための情報として、脚は重要ではなかったのです。抽象思考に優れている(数学や論文が得意だったりする)人なのかも知れませんね。

ちなみに18年前の「4本脚のニワトリ」は、その後私の研究室のマスコットとなり、研究成果であったソーラーカーのステッカー(上図)にもなりました。

1件のコメント »

  1. […] その一方でこの二年間、中核だった三人が就職して行きます。肉食係女子と草食系男子という言葉がよく似合う3人でした。初回の研究会でいきなり私にかみついた「かみつき系」女子は、本当に力強くプロジェクトを引っ張ってくれました。もう一人の肉食系女子は、最初のプレゼンで痛烈にこき下ろしたにもかかわらず、シャープな言語感覚を発揮し、骨展や義足プロジェクトの根幹となる思想に気づかせてくれました。4本脚のニワトリを描いた草食系男子は強い責任感を発揮して物静かに多くの仲間を引っ張ってくれました。 […]

    ピンバック by 山中俊治の「デザインの骨格」 » 卒業 — 3月 28, 2010 @ 10:17 am

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