骨展のきっかけになったCyclops
Cyclopsはとても思い入れのある作品です。私にとっての最初のロボット作品でもあります。2001年末に、日本科学未来館のオープニングイベント「ロボットミーム」展のために制作しました。
「ロボットミーム」展は藤幡正樹さんと松井龍哉さんとのほぼ3人展。会場構成は、吉岡徳仁さんに私からお願いしました。当時の吉岡さんはまだ30を過ぎたばかりで名作Honey Popを発表する前だったと思います。後にこの空間構成は、吉岡さんの代表作のひとつとされているようなので、お願いして本当によかったと思っています。
Cyclopsには「睥睨する巨人」と副題が付いていました。睥睨とは「威圧するようににらむ」ことを言います。
高さは2.5m。人の脊椎と同じような構造の背骨の周りに空気圧駆動の人工筋肉を配し、頭部のカメラで来場者の動きを捕らえ、目で追います。柔らかい動きで体をひねって、視線を送る以外はなにもしないのですが、人々はその瞳の奥に知性のイリュージョンを見ます。動きに反応するので、人々が跳んだりはねたりしてなんとか気を引こうとする光景が印象的でした。
Cyclopsの設計、制作には、今はtakramの主催者である田川欣哉君、フェリックス・スタイルの本間 淳君が参加しました。田川君は最近すっかり有名人ですが、本間君も負けず劣らずの(かなりユニークな)天才肌エンジニアです。
2005年12月にこの背骨ロボットを私の個展で再展示したことが「骨」展のきっかけとなりました。三宅一生さんが来場して「新しくできるミュージアムでこういうものを展示したい」とおっしゃって…。21_21の構想が正式に発表される半年前、建物完成の1年以上前ですね。もう古い作品なので実際の「骨」展には展示しませんでしたが、影の番長…かな。
実は「骨」展会場で販売している作品集「機能の写像」は、上の「3体のCyclops」が表紙のスペシャルバージョン(表紙が違うだけですけど)になっています。
Photo by Yukio Shimizu
[…] 私が最初につくったロボット作品“Cyclops” (サイクロプス、2001年制作)は、人を見つめ、視線で追うだけの怠惰なロボットでした。“Ephyra”(エフィラ、2007年制作)は人が触るとびくっとするだけ、“flagella”(フラゲラ、2009年制作)にいたってはのたうち回るだけ。いずれも「働かないロボット」です。ロボットという言葉の語源は元々「労働」なので、「働かない」のはいわゆる形容矛盾ですね。 […]
[…] ブログの方がまとまった事を話しやすいので、Twitterで意見表明などはしないと思います。多分「なう」も言わない。ゆらゆらと受け身で皆さんのつぶやきに、ただ反応していたい。アイコンをCyclopsにしたのもそういう意味です。 […]
[…] つまり、ロボットを生き物らしく見せるには、骨格が必要だったんです。pepperにはきっと、背骨がなかった。表面が体そのものを支えてしまっている不自然さが、ロボットらしさにつながってしまったんだと思います。もしかしたら、昆虫っぽい、となら言えるかもしれません。(写真の引用元) […]